看護師の職業病として、腰痛は世間的にも知られているところと思いますが、「不眠」についてはあまり知られていないのではないでしょうか。

眠れないけど、眠らないとやばいから、無理やり睡眠薬を飲んで短時間睡眠。その後にはフラフラした体で患者さんのケアをしているんだよね
正直なところ、この辺りの労働体制を根本的に見直さないと、「事故を起こす環境で働かされる罠」でしかないのですが。
ただの医療系Webライターのわたしには、問題提起の記事をうっすら拡散しながら、かつ、お仕事として「不眠に少しでも役立つアイテム」をそっと看護師さんの枕もとに置いておくことしかでいません。

というわけで、本日は「スリープテックの最前線」についての情報をお届けします。
看護師とスリープテック
わたしは精神科看護師として、「眠れない患者さん」のケアにかけては、医者よりも関わる時間が長かったと自負しております。

ですが、眠れない看護師のケア、これは実に難しい問題です。
というのも、看護師が眠れない理由は以下。
看護師が不眠に陥る原因
- 不規則な労働時間(夜勤、長時間労働)
- 感情労働によるメンタル面での消耗
- 安定しない人間関係
- 夜勤後の緊張解放からの興奮状態(眠れない)
- 「遊ばないともったいない」という無駄なバイタリティ

若さや性格ゆえの、というのもあるけど、看護師の不眠は環境から来る部分も多く、慢性的で粘っこい不眠に遷移していくのが特徴です。
睡眠に対する知識不足
労働環境の面がほとんどではありますが、看護師自身の知識不足や、「不眠なんか言ってられない、どうせ働かないといけない」と、なかば投げやりになってしまうメンタル面での問題も大きそうです。
看護師に必要になるスリープテック
先に、本題から話します。つまり、看護師はもう少し「安定した睡眠」を得た方が、体力的にも精神的にもラクになります。

これは、言われなくてもわかってるでしょうし、各種研究でも散々論じられていることですし、そして「でも夜勤なくならなくね」という解決不能でアンタッチャブルな問題提起でもあります。
おそらく、今後も労働環境は大きく変わらない上に、海外リソースの流入やら高齢化加速、医療新技術への対応なんかも課せられることでしょう。
こんな労働環境でも、働く人が確保されてしまうのが日本の現状。需要と供給はマッチするので、それはそれでいいのかもしれませんけどね。
一般的な睡眠時間
就業者の睡眠時間 (OECD 2011年調査
国名 | 女性 | 男性 |
日本 | 7時間36分 | 7時間41分 |
韓国 | 7時間42分 | 7時間52分 |
アメリカ | 8時間42分 | 8時間29分 |
カナダ | 8時間27分 | 8時間13分 |
メキシコ | 8時間08分 | 8時間16分 |
フランス | 8時間33分 | 8時間26分 |
イタリア | 8時間46分 | 8時間40分 |
スペイン | 8時間34分 | 8時間30分 |
フィンランド | 8時間34分 | 8時間27分 |
ニュージーランド | 8時間49分 | 8時間42分 |
スリープテックとは
スリープテックとは、睡眠(スリープ)をITなどの技術(テクノロジー)を活用し睡眠状態を知る(計測、記録、分析)ことをいいます。 これまで医療や研究機関でのみ活用されていたスリープテックですが、昨今はテクノロジーの発展によりスマートフォンや活動量計を活用することにより手軽にスリープテックに触れ、自分の睡眠状態を知ることが可能となりました。 そして今、最も注目されているのが入眠環境を整えたり、より良い眠りをサポートするスリープテックデバイス、スリープテックウェアラブルです。
スリープテックにできること
睡眠の質をモニタリング
製品によってモニタリングできる項目は異なりますし、「睡眠メソッド」の捉え方も違います。とりあえず、今回対象とする我々看護師の方は、一応専門的な知識があるはずなので、睡眠に対して何が正しいかは、それぞれの持論があると思います。

においは本当に測ってるのかな?

空気清浄機なんかだと、においセンサーが搭載されているものもあるけどね。技術的にはまだまだ未発展だよね。
睡眠に対するアプローチ
モニタリングの結果、デバイス側から、眠れるような対策をこうじてくれるものもあります。
スリープテックで眠れなくなる?
認知行動学者の研究チームがこれに気づき、「オーソソムニア」(Orthosomnia:完璧な睡眠を求めることによって引き起こされる不安症の学名)の研究も行われた。つまり、睡眠の質を高めるために開発された技術が、実際には行動障害を生み出していたのだ。その結果、夜眠れなくなってしまうおそれさえあった。
https://wired.jp/2018/12/01/sleep-technology/
スリープテックはマユツバ?
The rapid expansion of consumer sleep devices is outpacing the validation data necessary to assess the potential use of these devices in clinical and research settings.
https://www.dovepress.com/consumer-sleep-monitors-is-there-a-baby-in-the-bathwater-peer-reviewed-fulltext-article-NSS
マユツバというほどではないかもしれませんが、研究によって睡眠トラッカーの計測に関しては疑問の声も出ていると。
スリープテックの種類
これまでは「モニタリング」程度のもので、実際に睡眠にアクションを起こすようなアイテムはありませんでした。あったとしても、科学的根拠に乏しいものばかり。
今も似たようなもんといえばそうですが、スリープテックが怪しい方向にシフトしてきたので、いろんな商品を紹介してみたいと思います。
おすすめのスリープテック製品
記事更新時にはAmazonがちょうどプライムデーでセールなので、こちらもチェックしてみてください。
アプリ
一番取り入れやすいのは、アプリでしょうね。ただ、内容もピンキリなので、自分に合うものを見つけるのは一番大変だと思います。
睡眠日誌アプリ

概要
- 認知行動療法のメソッドで記録することに意味がある系
- 記録するのは入眠時間や生活習慣、アルコール摂取なども
- アテネ不眠尺度で効果測定
- 睡眠改善アプリにつなげる
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/column/00008/062400001/?P=3
REAL SLEEP
KDDIとニューロスペースの開発。睡眠状態を計測し、睡眠データを確認できる。さらに睡眠改善に繋がるアドバイス (有料) を受けられる。

- マットレスとベッドの間、もしくは布団の下に置いて寝るだけ
- 睡眠状態 (心拍数、呼吸数、身体の動き) をリアルタイムで計測
- 睡眠スコア、睡眠時間、睡眠の深さを評価
- 専用アプリと連動し、眠りが浅くなったタイミングでアラームを鳴らし気持ちよく起きることができる
- 睡眠データから睡眠改善を目的としたアドバイスを受けられる(オプション (月額300円))
https://www.kddi.com/with-home/device/uss01a/
オプションのアドバイスが気になるところですね。専用のデバイス「睡眠モニター 01 」も必要です。
時差ぼけ調整アプリ Lee Jet
ANAとニューロスペースが開発。

「時差ボケ調整アプリ」は、フライト情報や現地での予定をもとに、時差ボケを調整するために必要な光の浴び方、食事のとり方、睡眠・仮眠の取り方、体の動かし方など、体に良いことやいけないことが、出国前、機内をはじめとした渡航中、帰国後のそれぞれのタイミングにおいてアプリで提供されます。
https://www.anahd.co.jp/group/pr/201809/20180914.html
フライトとは無縁だが、なかなかにサポーティブな機能を備えています。
- 睡眠の傾向をアンケートから診断
- 利用するフライトなどを設定していく
- スケジュールが作られる
- オフラインでも操作は可能

飛行機内で、通信しないで使えるのはいいですね。ただ、これ、まだ一般利用者は使用できません。乞うご期待!
Head-Space
これは、マインドフルネスが上達するという瞑想レッスンアプリ。ダウンロードは無料で、無料のまま、ある程度の機能までは利用可能。有料会員になると、各システムのロックが解けるという課金システム。
Calm
こちらも瞑想。どれを利用するかは好みの問題。メディテーション(瞑想)が睡眠に効果的かどうかも、本人次第。
Inscape
瞑想を果たして、スリープテックに入れていいのかと、書きながら疑問に思ったのでこれくらいにしておきます。Inscapeは、Head Spaceの評判を探しているときに、「こっちの方がいい」と言っている方を見つけたので。
アイマスク型のスリープテック
アイマスクは、まだ睡眠に馴染みそうなデバイスですね。ヘッドバンド型もありますが、目を覆うタイプのものを特別にアイマスク型としています。
Sana Sleep

光と音の効果で睡眠をサポートするというもの。心拍数センサーも備えており、こめかみの拍動を捉えて、ユーザーのストレス・身体状態を把握する。らしい。
ゴーグルからは音と光がビートを打つように発せられ、毎回かけ始めはそれを認識できるが、やがて眠りに入ってくるうちに気づかなくなってくる。さらに、Sana Sleepはユーザーの脈拍や呼吸を計測し、バイオメトリクスの反応をもとに音や光を自動的に調節できるようになっている。
https://jp.techcrunch.com/2017/05/30/20170526sana-health-raises-1-3-million-to-hack-insomnia-with-smart-goggles/

今のところは、アメリカのFDAの承認待ち。日本に来たら、流行るかな。流行らんか。
Luuna
EEG脳波センサーがアイマスクの内側についている。脳波を読み取って、最適な音楽をデータベースから自動で選曲してくれる。音楽再生には、既存曲を再生する「自動選曲モード」と「脳波AIミュージックモード」から選択してプレイできる。

脳波測定って、結構な数の電極を頭に貼り付けるんだけど、そんな簡易のもので意味があるの?

診断目的での脳波測定とは目的が異なるので、睡眠の深さなどを調べるなら、可能かもしれないね。
パワーナップモード
ちなみに、睡眠に関しては、「パワーナップ」と「集中力アップ」の2種類、アプリから選べます。パワーナップは、その名の通り「仮眠」のための機能。深い眠りに入る前に起こしてくれるので、昼寝の際に寝疲れた感じが残りません。
ヘッドバンド

、、、ヘッドバンド?
モニターのようなものがついており、頭に装着するタイプのスリープテックデバイスです。
Dreem
ニューロモジュレーションしてくれるハイテクなヘッドバンド。
基本的にはヘッドバンド型のモニタリング装置で心拍測定や脳波探査をしてくれる。睡眠に対してのアプローチとして入眠プログラム、認知トレーニング、生体フィードバックと言った機能を備える。
骨伝導による入眠維持音を流し続けてくれます。骨伝導なので、脳に直接響くような感覚でしょうか。

寝れるの?
https://www.rakunew.com/items/78436
SmartSleep
Philipsのヘッドバンド型デバイス。
- ヘッドバンド型ウェアラブルデバイスとモバイルアプリ
- 睡眠専門医・研究者とともに開発したサウンドアルゴリズム
- 睡眠段階を検出し、深い睡眠になった時にオーディオトーンを発生
- 徐波(スローウェーブ)の活性化を後押し
- 寝返りしても安心な、着け心地のよいソフトなファブリック生地
https://www.philips.co.jp/c-e/hs/smartsleep-deep-sleep-headband.html
マクラ型デバイス
枕も睡眠には馴染みそうです。寝返り検出から、最新のものは寝返りを促す介入的なものまで。
Somnox
枕ではありますが、抱き枕として使用します。枕が呼吸のような動きをするので、その呼吸に合わせることで、自然とリラックスできるというもの。
YOKONE
横向き(側臥位)で眠りやすいように最適化された枕。スリープテックか、と聞かれると返事に困る。日本の健康商品に多い「冗長な能書き」がみられるAmazonページは、一読いただきたい。

マユツバ系の健康メディアなんかではよく取り上げられています。
睡眠に関しては、個人の感じ方が大事なので、いい人にはいいと思います。
室内環境を整える製品
スピーカーから、コンセント、そして部屋まるごと作っちゃおうというものまで。
スピーカー・イヤホン
スピーカーやイヤホン形状のものは、音楽やノイズ、環境に着目した製品が多いです。
BOSE NOISE Masking SleepBuds
言わずと知れたBOSEのノイキャンイヤホン。何度か紹介したこともあると思います。睡眠専用モデルで、購入者のレビューは軒並み高評価。「高いもの買っただけある」という満足感も強そう。
照明器具
こちらは明るさを調整することで、「入眠」以外にも、「快適な起床方法」にも着目した製品が多いですね。
Hue (philips)
スマートライト。
これ自体はスマートなライトなだけですが、照明のスマートホーム化には必須と言ってもいい賢い照明。スリープテック系のアプリやIFTTTと組み合わせて使うことで、アプリからの指示通りに照明をつけたり、何かの行動に関連づけて勝手に光量を調整したりしてくれる。
部屋
もう、丸ごと部屋を作っちゃおうってのが、家電総合メーカーの動き。
&パナソニック HomeX

HomeXを活用して、部屋丸ごとの環境を最適化する。まさに、スマートホーム。
https://and.panasonic.com/jp/index.html
コンセントプラグ
コンセント、プラグ?
Nightingale
看護師のみなさんお馴染みの、ナイチンゲールですね。
コンセントにぶっ刺すだけでホワイトノイズを発生させてくれ、余計な騒音をシャットダウンしてくれます。Echoなどのスマートスピーカーとも連動。
ベッド
スリープテックの最前線は、やはりベッドの改革。大手ベッドメーカーが開発に乗り出しています。
RP-5000SE
みなさんご存知、介護ベットも手がけるフランスベッドと、SleepTech最前線に立つニューロスペースのコラボ企画。
https://interior.francebed.co.jp/news/detail.php?id=411
Active Sleep Bed
パラマウントの新ブランド。睡眠アプリの、Active Sleep Analayzerと連動する。
医療現場で患者さんの身体の負担を減らすための様々な体位をヒントに、「入眠角度」という新習慣を提供するActive Sleep BED。
https://activesleep.jp/asb/

医療業界とも連携しているので、できれば我々にもインセンティブを。
スマホでの操作も可能。睡眠状態に合わせて適切な角度にベッドを調整してくれる。
ビブラート1
最適な状態を保てるマットレス、らしい。そして、このmoonmoonという会社は、いかにも「アフィリエイト」という感じがして、非常にお勧めしづらい。別に、アフィリエイトはただの広告形式なので悪いことではないのですが。

あえて言うなれば、スマートマットレスなら、私だったらActive Sleep買いますね。そもそも、買いませんけどね。
futocon(レイコップ)
マットレスでもベッドでもないのですが、形式上、もはやこれはセンサーの域を超えた機能を持っているので、大きさ的にはベッドサイズのスリープテックデバイスに分類しました。
東洋紡との共同開発。温度調整ができるので、目覚めと入眠、それぞれに最適な温度でお布団に入れる。温風で乾燥機能もついているので、マットレスを清潔に保つこともできます。
睡眠モニター
スリープテックの頭脳、心臓部と言ってもいい、モニターが主力になった製品です。
SENSE
「Sense(センス)」は睡眠モニター(図1)。ベッドの近くに設置する小さな球体状のセンサーと、枕に取り付けるバッジとを組み合わせて利用する。センサーは寝室の環境(温度、周辺光、湿度、空気の質など)の計測器も兼ね、バッジは睡眠中のユーザーの動きを計測する
https://xtrend.nikkei.com/atcl/trn/pickup/15/1003590/070601046/
モニター系は、アプリでも豊富にあるのですが、こちらは睡眠の質をモニタリングするのに加えて「部屋の状況が睡眠にふさわしいか」もチェック。さらに、ホワイトノイズを発して睡眠をサポートする機能も備えている。

あれ、ホワイトノイズって睡眠にいいんだっけ?

Nokia Sleep Withings
IFTTTと連動できる
まさか、ここでもIFTTTが出てくるとは。拙作のブログ記事でもHomePodと連動させるのに使用した、「これやったら自動で、これやるよ」っていうプログラムを、誰でも簡単に作ることができるものです。

IFTTTのことを考えると少し話がややこしくなるので、「いろんなアプリや家電とつながるよ」ってことだけ覚えておいてください。
Withingsといえばスマートウォッチ
あまり知らない方も多いかと思いますが、Withingsはスマートウォッチでも有名です。これからの時代は、スマホからさらに脱却していくことも考えられるので、時代の先を行きたい場合はお勧め。
Oura Ring
ウェアラブル端末の、指輪の形状をしたもの。パチモンみたいなものが多かった中で、主力に展開している「腕時計型」のウェラブル端末に劣らない性能。概日リズムなどを把握する。
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