看護学生の時に勉強していて、「サーカディアンリズム」って単語を聞いてから忘れたことは一度もない、ってくらいに強烈な単語でした。その後、夜勤をするたびに

俺の概日リズムはもうグズグズ
と悶えるようになったので、看護師を離れた記念に記事にしてみました。
サーカディアンリズムの概要
サーカディアンリズムとは
1日約24時間の周期的な変動を生理現象で、概日リズムとも言います。
多くの人は、24時間~25時間と、太陽周期より長めの体内時計が設定されており、太陽光や食事など、外界の刺激により適宜修正されています。これは人間以外にも、多くの動物にも同じような生理現象が起きていると考えられています。
同調因子
- 光による明暗
- 社会的因子
- 食事
- 身体的運動
- 温度・湿度・騒音・振動などの環境
太陽光が影響を与えているのは有名ですね。
サーカディアンリズムの影響
人間の生活に大きく関わることなので、生存活動全てに影響を与えるとして過言ではないのですが、特に大きな影響を与えているのが「睡眠」と「覚醒」に関するものです。
- 精神活動
- 体温
- ホルモン分泌
- 神経活動
- タンパク質・遺伝子発現
看護師とサーカディアンリズムの関係
では、お勉強はここまでにしておいて、「じゃあどうして夜勤でしんどくなるのか」について解説していきます。患者さんの不眠への理解と援助にも繋がる、かもしれません。
交代制勤務の代償は大きい
日本看護協会がガイドラインを出していますが、あなたの勤務している病院・施設にはどこまで反映されているでしょうか。
心身への負担
看護師が夜勤をしていてしんどいのは、どうしても体への負担が大きいからです。また、体がつらいから心まで荒んでくる、という理由以外にも、ホルモンバランスが崩れることで精神的に不安定になるという影響もあります。
睡眠
深夜勤務に従事すると、夜間の睡眠がなくなり、睡眠時間を補うために昼寝でごまかしたりします。ただ、この昼間の睡眠では「レム睡眠」がなくなり睡眠のバランスが崩れてしまいます。

昼寝の効果がないわけではありません。ただ、どうしても「寝ているべき時間」に寝るよりも熟睡はできないということですね。
疲労
疲労回復効果の低下します。サーカディアンリズムでは日中に体温が上がり眠りづらくなります。その間の睡眠の質は悪いので、前日までの疲労が蓄積しやすくなります。
食生活が乱れる
これは体験談ですが、ほぼ全ての夜勤従事されている看護師の方、食生活が乱れています。と、いうのも、規則的な時間に食事をとることができなくなるからです。

まとまった時間、昼寝をとるためには食事の時間もずれ込むし、夜勤明けには食欲がバカになってるから「あれ、これは朝食? 昼食? 夜食?」となって、なんだかんだめっちゃ食べたりします。
あと、私のような怠惰な人間は、ご飯を作るのが面倒になって「食事抜き」と「どか食い」をやりがち。
心理的負担
「レム睡眠」が取れない影響により、夢などで自然と解消された負の情動ストレスがたまるようになります。感情障害への影響も懸念されています。
A role for REM sleep in recalibrating the sensitivity of the human brain to specific emotions, Cereb Cortex, 21(1):115-123, 2011.
健康障害
夜勤による健康被害は別途、詳細な記事を用意しました。
社会的な負担
社会的な負担、というと想像しづらいところですが、「華の金曜日、なにそれ?」とか、「早起き野球? まだ勤務終わってないけど?」みたいなことだと思ってください。

でも、夜勤があるからこそ参加できる行事もあったりするから、一概に悪いとは言えないけどね。
社会参加、交際の制約
いわゆる、一般的な勤務体系と異なるので、他の人と生活行動が合わなくなります。
年齢の負担感
シンプルに、しんどい。退職まで夜勤をされている方もいますが、私は30代で白旗あげました。
サーカディアンリズムに関係するホルモン
太陽光に関係する「メラトニン」
メラトニンは、松果体から分泌されるホルモンで、前述の体内時計である「サーカディアンリズム」に深く関係していると考えられています。
メラトニンは覚醒後、15時間程度で放出が開始され、「眠気を呼ぶ」効果があるとされています。
太陽光で抑制
太陽光に関係する、というのは、日中、光を浴びている間は、眠気ホルモンであるメラトニンの放出は抑制されるからです。しっかりと太陽光を浴びた方が目がさめる、というのはこの辺りの関連性から言えるものです。
メラトニンの効果
- 生体リズムの調整
- 深部体温の低下
- 性腺を抑制
メラトニンとセロトニンの関係
ちなみに、このメラトニンというのは「セロトニン」というホルモンが材料になって産生されています。メラトニンを作るためには、セロトニンも十分に作られている必要があるということです。

セロトニンといえば、うつ病だね。
うつ病はセロトニンも含めて「モノアミン類」という神経伝達物質の作用・効果の変化によっておきているのではないか、と考えられています。
精神科ナースとしては、睡眠と精神疾患が深く関係しているのはこの辺りの事情もあるだろうなと考えています。なので、治療上、睡眠の質を高めることは有意義なので、こうやって勉強したりしています。
メラトニンの増やし方
メラトニンを作るためには、セロトニンを十分に供給する必要があるということがわかりました。メラトニンを体内に保つためには、以下の方法があります。
- ストレスや疲労によりセロトニン効果は抑制される
- 必須アミノ酸のトリプトファンを摂取する
トリプトファンを多く含むもの
- 肉類
- 魚類
- 豆類
- 乳製品
食材 | 含有量(おおよそ) |
カツオ(80g) | 246mg |
マグロの赤身(80g) | 256mg |
ハマチ(80g) | 200mg |
肉の赤身(80g) | 208mg |
牛・豚・鶏レバー(50g) | 145mg |
チーズ(2個・50g) | 145mg |
ヨーグルト(200g) | 86mg |
牛乳(200cc) | 76mg |
卵(1個) | 86mg |
木綿豆腐(150g) | 150m |
摂取する時間は朝食時
朝食をとった方がいい、というのは、このトリプトファンを摂取することで目覚めをよくする、という意味合いもあります。
目覚めに関係する「コルチゾール」
コルチゾールは睡眠中のエネルギー生産に関係するホルモン。副腎皮質から夜中の3時ごろから分泌され、朝方にピークを迎えます。この際に体内に溜め込んでおいた栄養素、ブドウ糖、脂肪なんぞをエネルギーに変えることで代謝系を整え、朝から元気にしてくれます。
コルチゾールの効果
- 代謝促進
- ストレス対処
- 覚醒準備
サーカディアンリズムを保つために
一般的な対処方法
- 一般的な対処方法
- 朝起きたらまずはカーテンを開けて太陽光を浴びる
- 30分程度の軽めの運動を取り入れる
- 朝食をしっかりととる
- 良く噛んで食べる
- 家族とのリラックスした時間を過ごす
- トリプトファンの摂取
時差勤務でも取り組めること
看護師の夜勤の過ごし方に描いてみました。こちらも参考にしてみてください!
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