このページでは、拒食症(神経性やせ症」を念頭に置いた上での「摂食障害患者」について理解するために、「これだけは知っておきたいこと」をまとめました。
元々は、摂食障害患者が起こした裁判で、身体拘束において「違法性がある」と判断された事例を受けて記事を書いていたのですが、あまりにも長くなったので摂食障害についての基礎的な解説はこちらのページに移しました。

とは言え、摂食障害に関しては1ページでまとめられるほど単純な関わりはできないので、また機会があれば摂食障害の看護という記事をまとめようと思います。何年後になることやら。
最低限知っておきたい、摂食障害のこと
摂食障害の基本的なことです。
判例とは関係ありませんが、「一般的な摂食障害(および神経性やせ症)」ってこんな感じですよ、ということを知っておかないことには「思春期の女の子が拘束されてひどい!」という感想にしかならなくなると思います。
最低限の基礎知識くらいは身につけて今回の判例を読めればいいのかな、と思ってまとめました。
摂食障害は「食事を食べられない病気」ではない
簡単に摂食障害(今回は神経性やせ症≒拒食症)について知っておいてほしいことは「食事が取れない」という病気とは少し違うということ。
我々の感覚で「食事が取れない」は、抑うつ気分などで「食べる気になれない」というイメージがあるかもしれません。摂食障害の合併症で気分障害が起こることは度々あるので、診断においては鑑別が必要でもあります。
先にわかりやすく書けば、摂食障害は「食事(体重)に対する考え方」の病気です。考え方というと、自分でコントロールできそうな感じを受けますが、もっと根底の「行動を決定する思考回路」以前の部分が障害されていると考えられます。

つまり、本人も病気の部分を認知できていない=病識が獲得できない、可能性がある障害ですね。

「気持ちの問題」という捉え方では、本人の病状理解には繋がらないので、何が障害されて、何ができなくて、何ができるのかを丁寧にアセスメントしていく必要がありますね。
摂食障害のタイプ
まず、摂食障害はいくつかのタイプに分類できます。
- 神経性やせ症
- 神経性過食症
- 過食性障害
原因は個々の症例によるところはありますが、精神科に入院するケースで言えば「体重に対する認知の歪み」が認められ、つまり「食事摂取の改善の必要性」を認知しても、「食事に関する異常行動」を優先してしまうような状態と言えます。

もっと極端に言えば神経性やせ症の場合、「食べなきゃ死ぬ」と分かっていても、体重を減らそうとする状態ってことですね。

アイデンティティが崩れているよう状態なので自暴自棄となって「間接的な自傷行為」である部分もありますが、一方で「自分にはこれが普通」「今までも大丈夫だったからこれからも大丈夫」と病識が欠如しての結果、という場合もありますね。
逆に、同じ摂食障害でも「とにかく食べてしまう」というタイプもあり、こちらは必ずしも低体重とはなりませんが、食事摂取のたびに嘔吐を繰り返し、かつ食べるときは「ドカ食い」になるため、経済的にも深刻なダメージを与えることになります。
その結果、摂食障害患者の中にはクレプトマニア(窃盗症)とならざるを得なくなるケースもあります。クレプトマニアは根底に何かしらの精神疾患の表出型とも見られており、摂食障害と窃盗症が合併するケースは少なくありません。(入院となるケースの中では体感としては多い)

体重減少のための行動も極端
一般的に体重を減らそうと考えたら、ダイエットとして「食事量を制限する」や「運動をして消費カロリーを増やす」なんてことが考えられます。
しかし、摂食障害渦中にある患者にとっては「体重減少を最大の目標としているために、数字が減るためなら何だってする」ため、以下のような特徴的な行動をとる場合があります。
- 極端な食事摂取量と、油脂(高カロリー)に対する極端な嫌悪
- 数字に対するこだわり(見た目ではなく数値で評価する)
- 食事摂取後に嘔吐(自己誘発性嘔吐)
- 下剤・利尿剤の濫用
摂食障害患者の看護についてまとめるときに、摂食障害の特徴的な病像についてはまとめますが、とりあえず今回は「誰かが(物理的に)止めなければ、摂食障害患者の食事の問題は解決しない」可能性が高いことだけ覚えておいてください。

本当に、冗談抜きで、本人は倒れるまで「節制行動」や「過食」を止めることはできません。

本人の思考は(脳萎縮や低栄養がなければ)元来のままであるため、「ちゃんと話せば伝わる」と思うかもしれませんが、歪んだ認知のままでは「言葉の受け止め方」も違い、かつ「自分に都合のいい解釈」をするために、交渉で納得してもらえるケースは少ないですね。

「(障害のせいで)話してもわかってくれない」ので、医療者も家族も、本人の要求には淡々と接するしかないのですが、この態度も患者を傷つける言動になってしまうので、関わり方が本当に難しいんですよね。
なぜ、摂食障害になるのか
摂食障害の原因に関してははっきりと「これだ」と断言できるものは少なく、文化社会的要因(痩せている女性を偶像化)、心理的要因(ストレスなど)、生物学的要因(脳機能の一部障害)などが複雑に絡み合って発症していると考えられています。


後でも書きますが、神経性やせ症は1970年〜1980年ごろに患者数が増加しています。これは、マスメディアが「女性像」を「痩せたもの」として固着化してコンテンツ制作してきた影響もあります。

太った女性は笑い物にされるようなテレビ番組ばかりだったからねぇ。痩せている女性たちまで「ダイエットしないと」なんて言って煽るくらいだったし。
現代は、この「痩せているのが当然」の女性たちが、母親となってその価値観で子供に関わるようになってきています。
一方で、近年は神経性やせ症の患者数は横ばいとなっており、価値観の多様化(テレビを見ない)子供が増えた影響も少なからずあるんだと思います。子供の数は減っているので、相対的には有病率は上がっている可能性はありますが、これまでの伸び方と比べれば緩慢な動きにはなっていると思います。

テレビが悪い、というわけではないのですが、マスコミメディアが「精神科が思春期の女の子を縛り付けてひどい治療をした」という報道のあり方には「お前がいうな」という気持ちがあるのは隠せませんね。
何歳からなるの?
摂食障害は主に思春期以降の女性に多く発症しますが、1990年代後半から10~15歳の前思春期年齢(初経前の小中学生)でも発症する患者が増加し、小児領域の疾患として重要性が増しています。
http://www.edportal.jp/sp/about_03.html
これは個人的な見解ですが、基本的に「自己と他者」の意識がしっかりと分離できる年齢になれば摂食障害にはなりうると思います。この自己と他者(他者が評価した自分像)との分離化作業がうまくいかないことで、自己概念が揺らいで摂食障害となっているケースが多いと感じるからです。
アイデンティティの葛藤は思春期ごろから始まりますが、このアイデンティティの萌芽に対しての何かしら抑圧的なものがあれば、摂食障害は成立するんじゃないかな、と考えています。つまり、思春期を待たずしても摂食障害様の行動が始まる可能性は十分にあると。
低年齢での事例ほど、「大人びたようなことを言う」小学生が摂食障害に悩まされていると感じました。ASDのような堅苦しい大人び方ではなく、他者に依存的で甘えたことも言うので、言葉だけは一丁前だけど幼稚な振る舞いを見せたりします。自分を大人と同一視してまねる術は覚えたけど、思考回路は追いついていない、そんな感じです。

とりあえず、思春期においては摂食障害は起こりやすいと言う認識でいいと思います。むしろ、ここで治療しないで歪んだ認知のまま成人した方が、治療としてはより困難になっていくケースが多いと感じた次第です。

思春期はアイデンティティを確立する作業の途中だから修正ができるけど、大人になって「自分の理想像と一体化した」価値観だと、治療と正しく向き合うことはかなり難しい。

どれだけ行動療法で入院時に体重を増やしても、退院後に理想化した自分に戻る作業を繰り返すだけですからね。医療者もそうだけど、本人も虚しさを感じていると思うよ。

脳も報酬体系のバグが起きて依存を形成しているからね。本人が自分の意思でやめる、はもう無理な話になってくるんだよね。一生のことだってわかってるから、思春期患者の対応には慎重になるよね。
思春期患者こそ「治療のファーストコンタクト」が大事
思春期とはいえ歪み始めた価値観が固定されれば修正は難しいし、何より摂食障害の場合は脳への影響も大きいので、短絡的な価値観形成が固着化しやすい病気でもあると思います。

捻れた「捉え方」のなかで、患者ももがいているところです。医療者としては、患者が治療と向き合えるように丁寧に準備・説明をして、治療の心構えを作っていくんですよね。

とはいえ、既に身体的に緊迫した状態だと、この準備も疎かになりがちだし、動けないほどに重症化した事例患者は、やっぱり根っこにある「認知の歪み」も強力。家族のフォローもマイナスに働くような環境での治療開始となるから、大事なファーストコンタクトが患者・治療者にとって好ましい形じゃなくなるケースがほとんどですよね。
脳萎縮で加速化する「誤った認知」
摂食障害患者の脳萎縮は顕著に現れます。脳萎縮による影響に個人差はありますが、軽い記憶障害のようなものがあったり、思い込みが強まる影響があったりするような感じはします。

摂食障害の方は治療中はやることがないので大体、看護師の噂話をしているんですけど、「どんな尾鰭がついたらそんな話に?」と驚くこともありますね。

脳萎縮の影響がどこまであるか知りませんが、根も葉もない話を確信しているケースもあって、どんな噂を聞いたのか、突然看護師への対応が変わることもあります。つらいね。
原因は自尊心の低さ?
摂食障害の原因には、よく語られるのが「自己同一性の葛藤と、両親との関係性」ということ。両親の関係は、自己概念の形成に大きな影響を与えるので、結局のところ「アイデンティティの確立」というあたりで何かしらが障害された結果だと考えられています。
もっとわかりやすいのは「自尊心が低い」ということになるのですが、根本的に、なぜ摂食障害患者の自尊心が低いのか、というところがひとつの治療の課題になってくると思います。
自尊心が低い、ってどういうこと?

ここも私見ですが、自尊心が低いというよりは、むしろ自尊心が高いんだと思うんですけどね。
「理想の自分」と「実際に自分が認知している自分」のギャップが容認できないことが歪んだ認知を作る原因の一つとして考えられると思います(私見)。
この「理想の自分」というのも、自分が作るよりも「周囲の評価」が作っている場合があって、一番例としてあげやすいのは「(自分が考えている)親から見た自分像」です。
例えば、「〇〇ちゃんはすごいね」と言われると、その評価を自分と同化させてしまうところがあるんじゃないかと思います。これは、逆にいうと「自己像」を自分で作る能力が弱いまま思春期を迎えてしまって、思春期独特の変化に対応できずに摂食障害となるケースはあるんじゃないかな、と。

自己像を作る過程で、過度な両親や周囲への依存があって自己像が成長しないまま、誰かの理想像にすり替わってしまったような、そんな感じですよね。
今回は根底にあるかもしれない「人格障害(パーソナリティ障害)」には触れませんが、この自己の弱さは「自己決定力の弱さ」につながり、治療の面では「誰かが決めたこと」に対して依存し、かつその決定に対して「自分は悪くない、その人が悪い」という思考につながります。これは手強い。
摂食障害に多い「考え方」の特徴
近年、摂食障害(とくに拒食症)の患者さんにセットシフティングとセントラルコヒーレンスという2つの認知機能が、健常者に比べて低いということがわかってきました。 セットシフティングとは思考の切り替えやすさ、すなわち認知の柔軟性のことです。 柔軟性がないと「白黒思考」になってしまいます。セントラルコヒーレンスは全体統合性と言って、入ってくる様々な情報を全体の中で処理して統合していく能力を指します。
https://www.cocoro.chiba-u.jp/recruit/ed/CBT.html
補足する文章を載せておきます。患者や自分の子供の対応の際に参考にしてみてください。
つまり、摂食障害ってどういう病気?
簡単にまとめると、摂食障害は以下のような感じです。個人的な意見です。診断は医師につけてもらってください。
- 「自分」をうまく形成できないと「理想の自分」と一体化を図ろうとする
- 極端な行動で理想の自分と同一化を図ろうとする
- 抽象的な概念形成ができていないので、評価は「数字」になりがちで、かつ絶対的になる
- 幼少からなる可能性はあるが、逆に言えば自己概念が崩壊すれば誰だってなりうる
何度も言いますが、個人的な意見です。認知特性に偏りがある以上、健常者が横から「一般論」を持ち出して語っても、本人の理解にはつながらないのです。本人を理解した上で、本人の価値観の中からアプローチをかけないと治療は進められません。

しかし、本人を知ることを始める入院初期が「身体管理」になると、医療者と患者の関係性を築くことは難しい。

できることなら、家族・本人と関わりながら納得して治療に移せる関係づくりを入院前からしていきたいところですね。
神経性やせ症の身体管理の難しさ
神経性やせ症における身体管理の難しさについてまとめていきます。
摂食障害と死亡率
Twitterで判例が話題になったときに、「摂食障害は放っておくと死ぬ」という理解が一定数は確認できて、精神科以外の医療職・一般の方にも広まっているのは素晴らしいことだと思います。
摂食障害は死亡率だけで言えば6~20%と言われ、想像しやすいところで言えば、コロナウイルスが1~2%、致死率の高さが話題になったSARSで14~15%です。
http://www.edportal.jp/sp_pro/outline.html
ただ、少し想像しづらいのが「どうして摂食障害で死ぬのか」というところ。また、「重症例」だから死ぬのか「慢性的な変遷を辿って」死ぬのか、というところもイマイチ想像しづらい部分だと思います。

患者さん自身が「自分は大丈夫」と考えるところまでが摂食障害なので、周囲が止めなければ死に至ります。
摂食障害って「死ぬ」病気なの?
摂食障害の場合、身体合併症(低栄養)を原因とした死亡例も間違いなく問題なのですが、実は自殺による死亡数も多いです。かつ、摂食障害は他の精神疾患と同様に、「回復した」というポイントがはっきりとあるわけではないので、「摂食障害者の疾患による死亡数」を測定することは難しいです。
通常の医療機関で受けいれられず、大学病院の精神科などで入院治療を受けた摂食障害の予後は極めて不良です。入院治療を受けた神経性食思不振症は10年以内に数十パーセントが死亡しており、また、神経性過食症もなかなか改善していません。
https://nanba-nagata.com/medical/seinenkiseishin/seinenkiseishin03/
摂食障害の自殺による死亡率に関する報告では、神経性やせ症の自殺による死亡率は、1年につき1000人あたり1.24人で一般人口の31.0倍(標準化死亡比による)、神経性過食症では、1年につき1000人あたり0.30人で一般人口の7.5倍(標準化死亡比による)と報告されています。精神疾患の中では、統合失調症、うつ病、双極性障害、物質依存に次ぎ、自殺による死亡率が高いことが知られており、自殺による死亡にも注意を払う必要があります。
http://www.edportal.jp/sp/topics_06.html

栄養が少なくなれば、当然免疫が弱まるし、その上嘔吐を繰り返したりすると誤嚥を起こして肺炎で死ぬこともある。回復する余力もなかったりするんだよね。
重症例と身体管理
重症例の場合、心理面への配慮よりもどうしても身体管理が優先されます。

本人の意思が大事なのは百も承知だけど、病識がない中で本人の理解が追いつくのを待っている時間的猶予はないんですよね。

本人の意思決定については後半でも書きますが、「本人の意思」を評価する段階は「治療の最初期」であってはいけないと思います。考え方に偏りがある中での意思決定は、病気の部分がさせている意思決定であると考える余地があるからです。
摂食障害とリフィーディングシンドローム
記事を執筆する背景のひとつに「点滴抜去で身体拘束?」みたいなところへの牽制の意味があります。
先にものすごく簡単に説明すると、低栄養状態から急に栄養を摂取すると、代謝異常が起きて死ぬ可能性があります。このコントロールは完全に医療側の責任になるので、「どれくらいの食事をしたか」「どれくらいの排泄があったか」はすごく大事。
栄養の管理が難しい
まだ精神科的な治療も始まっていない制限型の摂食障害患者は、食事摂取自体に忌避感が強い。
場合によっては点滴から水分が入ることだって我慢できずに医療者から隠れて点滴のルートを分解して途中から捨てたりします。食事を捨てたりは序の口で、マットレスの中に残飯が詰め込まれていたりするわけです。

体重測定前だけ大量に水分を摂取して体重増やして見せたり、その後嘔吐したりして栄養摂取をコントロールしたりします。経管栄養だって、サイフォンの原理で胃から逆流させたりしますからね。

点滴や経管栄養は、感染や誤嚥の原因になって死亡事故に繋がるから、医療者としては本当にナーバスになる問題ですよね。
ただ、基本的には(特に神経性やせ症の)患者の認知は「体重・体型」が全て。「食事の微調整」が簡単に反故にされ、理由づけ(看護師の態度が嫌だった、先生が言うことを聞いてくれなかった、など)はなんだっていいわけです。

簡単にいうと「死に向かう行動」を躊躇なくとることができるんですよね。

「考え方の特徴」でもありましたが、情報処理が苦手で白黒思考になりやすいので、入院環境では特に「摂食行動」に向き合うことになるわけですね。
摂食障害患者と医療者のミスマッチが起こることは必然とも言える
先に説明した「自尊心云々」に繋がるのですが、摂食障害患者の思考形成の偏りの影響で、「理想の自己像」につながらないヒト・モノ・コトは躊躇なく切り捨てられるところがあります。
うまく治療に乗らないと「こんなはずじゃなかった」と(こんな入院のはずじゃなかった、親に騙された、医者が嘘をついている、など)正当化できる理由を探して、治療から逸脱する自分を合理化して、かつ「それを邪魔する医療者が悪い」と責任転嫁することで、本人の中では確信して逸脱できたりします。

これ自体は、誰にでも起こりうるストレス対処の防衛規制なんですけどね。
治療環境が本人の願うようにはならないもどかしさ
最初に戻って、症例の中にも「ベッドとポータブルトイレだけの独房みたいな場所」というのがありましたが、これはリフィーディング症候群の可能性があるレベルの神経性やせ症患者の場合には観察のために必要な治療環境だと言えます。BMI15未満ですし。
もちろん、初回入院だし、もう少し余力がある状態で入院してくれれば、ある程度緩い環境下から認知の歪みを矯正するプログラムなどが用意できたんだろうけど。
点滴もしていたことを考えると、まずは精神科治療をスタートするための最低限の栄養管理ができる状態まで要観察ということだったんだと思います。
親の協力が不可欠だけど、親の感覚もずれている場合は多い
この点について、どこまで本人と共有できていたのか、っていうのが治療に載せるための重要なアプローチになりうるんだろうけど、これを未成年でしかも低栄養状態である当人への了承がどこまで妥当性を持って実行できるのかってのは、正直、難しい話ですよね。

細かい話をすると、誰が見てもすぐに倒れるくらいまで低栄養状態の子供を放っておける親っていうのは、やっぱりどこかで「治療から逸脱する因子」があるんだよね。
親と子の関係性っていうと、「親が子供に暴力をして性格が歪んでしまった」なんてことを考えがちだけど、実はそうでもなかったり。むしろ、「親が子に依存している」場合も多分にあって、親の自己像空歪んでいて子を自分と同一視して接していたり、なんて誰にでもあるようなことでも起こりうるんだよね。

子供の自由を尊重していた、といえば聞こえがいいかもしれないけど、それはただの責任の放棄だよなって、入院するケースに関しては思うよね。

親が決断できなくて、子供に責任を押し付けているだけだもんなぁ。
親の認知が歪んでいるケースも多い
親も摂食障害で、子供に「お前は太りすぎだ」と言われたことがきっかけ、なんてのはテンプレ的な事例だけど、お互いの自己像が朧げで同化しているから、母・子で競り合って摂食障害になるケースはああるよね。簡単にいうと、親の認知が歪んでいる。
んで、この手のパターンで、何も治療できずに家に帰っても、(親と子)双方が都合よく解釈した論理でお互いを傷つけ合うだけで、摂食障害の根本的な原因は全く未解決のまま退院しているわけです。
人格障害が強まってさらに親子の関係性が悪化したり、摂食行動がさらに歪になる。患者本人は「無理やり入院させた」親への不信感が強いし、親も「子供に悪いことをした」と思っているから、誰にもとめられなくなる。
結局、同じ繰り返しになる
こうなっちゃうと、「もう二度と来ない!」といって退院した患者さんが、低栄養で転倒して起き上がれなくなったり、意識不明で緊急入院してICUに担ぎ込まれて、精神科病棟は関係性のギクシャクした患者と再開する日を待つしかなくなるわけなんだよね。
摂食障害の一般的な治療
低栄養の場合は(生命維持のための最低限の栄養を維持する)身体管理からスタートします。理由は上述の通り、食べればいいってものではないから。食事摂取はひとつのステップとはなり得るものの、「体重を増やして退院を目指す」は根本的な解決にはならないのです。
摂食障害の治療のゴール、は遠い
ゴールを先に言ってしまえば「適正な体重を維持する生活習慣が獲得できること」になると思いますが、この道は非常に遠いです。
根本的に、患者の理想化した目標と治療のゴールは真逆をいくものですから、患者自身が「治療したい」と思わない限りは治療が成功することはなく、さらに患者が治療したいということすら実際には難しいのが、神経性やせ症の治療が困難を極める理由だと思います。

依存症の話にも似ていますが、一定期間を頑張ることはできても、何か心理的に負担がかかったときに異常行動が再発する可能性があり得ます。
あまり「正しい治療」について書いてしまうと、神経性やせ症の個々の症例の治療目標とバッティングする可能性があるので、ここでは簡単に触れるだけにしておきます。
認知を矯正するために認知行動療法を治療プログラムとして取り入れるケースもあると思いますが、基本的には患者さんと医療者で協力しながらやっていくことが望ましいです。ただ、医療者側の治療のゴール設定と、患者の自己中心的な解釈は衝突しやすく、簡単に言えば、うまくいくことは少ないです。
最低限知っておきたい、摂食障害こと、まとめ
別記事で簡単に解説するために箇条書きにしたものをここに載せてまとめとさせていただきます。
摂食障害という病気のこと
- 摂食障害は「食欲」の病気というよりは「食事・体型の考え方」の障害
- 「考え方の偏り」は、本人も周囲の人間も認知しづらい=病気という認識が得られにくい
- 極端な解釈、異常なこだわりから「死ぬ寸前まで行動をやめられない」
- 依存を形成しやすく、本人が自分の意思で行動を変えることは難しい=医療介入の必要性
摂食障害で死ぬということ
- 摂食障害(特に神経性やせ症)の死亡率は6〜20%と言われている
- 病気への理解が得られないまま治療を終えると、入退院を繰り返す
- 重症例での入院は、治療者と患者の信頼関係が築きづらい
摂食障害の治療を始めるということ
- 本人の意思が「病気」に縛られているため、治療は「衝突」と「葛藤」から始まる(揉める)
- ファーストコンタクトで治療への向き合い方が決まるが、重症例はそのチャンスがなくなる
- 重症例の場合、心理的な配慮よりも身体管理が優先される
- 自己概念を形成する途中である思春期(若年層)の治療は、最後のチャンス(という気持ちでいる)
コメント
山梨県が全国初の「人口減少危機突破宣言」を行い、合計特殊出生率が1.87から1.40に減少したことが報じられた。長崎知事も「私たちは瀬戸際に立っている」と述べ、人口減少に対する危機感が高まっている。また、福岡地裁が同性カップルの結婚制度を違憲と判断する判決を出したことも話題となっている。一方、アートやSDGsに関する記事もあり、クロノバクター・サカザキによる乳児感染の怖さや、フランスの凱旋門が変貌する様子などが紹介されている。ビジネスや特集にも注目が集まっており、日常が取り戻されつつある中での転換や、結婚に関する記事も掲載されている。また、台風2号の接近による大雨や災害の可能性にも注意が必要である。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6482cfc5e4b06725aedf0f9c