
忘れないうちに書こうと思ったけど、忘れられない看護師の思い出があるんだ。
というわけで、この記事はいかに看護研究がブラックな仕事か、という点について強く主張していこうと思います。もちろん、メリットもあるので、天秤は用意してほしいが、激しく振り切れるので注意してほしい。
看護研究とは
看護研究(かんごけんきゅう、Nursing Research)は、臨床現場での看護実践の事象(phenomenon)を記述し、またそれを支えるための調査研究活動を指して用いられる言葉である。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/看護研究
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/看護研究
看護師は医療関連の業務を取り扱うため、専門性の高い仕事だとされています。看護・医療の質を維持・向上するために、自分たちの行なっている看護実践が正しいものか、よりよい方法はないのか研鑽するためにも、看護研究が必要とされています。
看護にも根拠を求める時代に
もう、看護学校に通い始めると、先生たちはみんな得意げに「エビデンスが云々」と語り出すことが多くなったので、「エビデンスに基づいた看護実践」というものも耳に馴染むようになりました。

患者に看護を提供する際に「それって本当に正しいことなの」と疑問に持ち、科学的に根拠のあることなのか確かめ、評価することが大事であるということですね。
とはいえ看護研究はまだ黎明期
看護研究を自分でやってみると、まだまだ看護の領域においては「研究」が研究として機能していないように感じることが多々ありました。この分野は、もっと他業種・他職種・他の専門家を交えて、医療から離れた視点を入れて見直すべきだと思います。
看護研究のエビデンスが看護研究
看護研究の論文を読んでいると、とてもよく調べられた看護研究がある一方で、「これって本当に科学的根拠としていいの?」と思わせるものもたくさんありました。「他の研究でこう言ってたから」みたいなもので数珠繋ぎにそれぞれの根拠とされていることが多いですね。他の人が論じたものは、エビデンスではありません。自分の研究に活用するためには、まずそう言った正当性を地道に積み上げることをやっていかないといけないのですが、正直なところ、業務の合間にちょちょらにできるようなことではありません。
患者を相手に研究をするということ
特に、看護研究のテーマとなりうるものは、対患者であるもの多いですし、それこそが看護研究の本髄であると私は考えています。なので、当然、先に述べた「根拠となりづらい質的な研究」も重要でありますし、同時に患者の負担となる研究については見直す必要があります。

倫理、うるさくなってきたしね。
いえいえ、うるさいだけじゃなくて、看護師を続けていく上で、倫理は大事です。最終的に自分の身を守るのは、自分の看護観、あるいは倫理観とも言い換えられると思います。これはまたいつか別の記事にしますね。
看護研究の目的
- 「当該病院の看護実践、業務の点検・評価」
- 「看護・医療の質の維持・向上」
宮芝(2012)『看護研究』

私が看護研究を(事実上)やれと言われたのは、入職して3~4年目くらいのことだった。
さて、真面目なことは概ね書き上げたので、ここからは私の「看護研究」についての個人的意見を書き連ねていこうと思います。
看護研究について思う疑問
看護研究の目的や意義を把握した上でも、やはり疑問は尽きないもの。
なぜ若手を狙うのか
このプリセプターをしたのかしてないのか、自分も一人前だと思えないくらいの年代を積極的に狙ってくるのが、看護研究という仕事です。まずはその理由から徹底的に分析してやりましょう。
ベテランはきっぱり断る
ベテラン看護師は強い。これまでの人生経験から「はっきり断らなければ自分がやられる」ということをよく知っている。肝も座っている。いざとなったら「今までお世話になりました」と辞表を叩きつけて、他の病院で働くこともできる。

この強さがベテランたる所以です。自分を守る術を知らずして、看護師は長く続かないよ!
若手が同じことすると職にあぶれる
これは注意点なのですが、若手が同じことすると、辞めることはできますが転職の際に「看護研究が嫌で師長の頭に辞表を叩きつけた」と説明するのが、だいぶ苦しいです。やめておきましょう。
断るということは看護研究のメリットが薄いことをみんな知ってる
なぜ、若手である、あなたにお鉢が回ってきたか。本当に、看護研究が「やるべきこと」であれば、先輩たちは率先してやります。やりたがらないのは、大変である以上に、得られるものがないからなんですよ。
若手こそ「自己研鑽が必要」と言い訳が立つ

本当に、自分のためになるから。若いうちに、しっかりとした形で研究発表を経験した方が、将来、看護師として絶対に役に立つよ
そう諭されました。まぁ、私はブログで講釈垂れてるほど実践編では弁が立たないので、話がおりてきそうな段階で諦めて「やらせていただきます」と答えましたけどね。
結果的に看護師やめてる

役に立たせるべき看護師としての将来がなくなったよ!
逆に、看護研究の成果なのか、文筆業で生計を立てているので、結果オーライと言わざるを得ないでしょう。私の負けでした。
大学で学んだことがうっすら残っている
まー私は看護系の大学には進んでいないので、看護研究の勉強はヌルーとしか勉強しませんでした。なので、「かんごけんきゅう」について調べることから始めましたが。
ベテラン看護師になると、あまり研究に力を入れていなかったという世代、そもそも興味がなくて卒業と同時にシナプスの結合を解除した方も多いのです。研究の相談すると煙たがられることもしばしば。
看護系の大学ではしっかり研究の練習をしてくる

大学卒業してくれた後輩に聞きながら「分析って何?」「質的とか量的とか、別にどうでもよくない(愚痴)」とかやってました。
もう後輩に丸投げもありなんじゃないかと思ったがパワハラ
パワハラです。
辛辣な看護研究批判をしない
若手に任せておけば、他のベテランさんは納得するので部署的な収まりが良くなります。これが、「やる人がいないから」とベテランさんに看護研究させると、師長がいないところで痛烈な看護研究批判を展開します。結果、部署のモチベーションは下がるし、後輩が看護研究にトライしたくなくなります。

こんな看護研究批判記事を書くこともないだろうしね。

この記事は間違いなく、看護研究にトライする人には悪影響だろうね
看護研究のつらいところ
看護研究テーマでNGを出される基準
- 倫理の壁(患者に実害を与えない)が超えられないもの
- 業務改善であってはならない(?)
- 実際の看護に活かせるものにする
- すでに研究されたものではない
看護研究はとんち
上記のNG要素をかいくぐったテーマでなければ、GOサインが出ることはありません。
業務改善でも良さそうな雰囲気が、看護研究の目的に書かれていたけどね。実際には、病棟レベルの「こうしてみたい」という改善案を実践するだけじゃダメなことも多いです。

一方で、自分たち、病棟での看護実践に役立つものでなければいけない、なんて基準もあるので、この辺りは完全にとんちです。答えはないんだな、って思いました。
NGを出す人達
- 師長「もう少し部署に還元するものを」
- 共同研究者「ありきたりなテーマだからもう少し」
- 倫理委員会「患者の負担が」
- ベテラン看護師「私たちへの負担が」

もうさ、外部からNG出すくらいなら、俺に任せるのやめませんか。っていうか看護研究システムはもう終わりに(略)
倫理委員会から看護師を除くべき
我々の最上級上司である看護部長や副部長クラスを召喚されると、「こうしなさい」感が強すぎて、「自由に研究を」どころじゃなくなるんですよね。せめて連絡役は別の方に。
看護研究は負担
看護研究の負担について論じていきます。お金もかかるし、時間も取られる。その上、業務ではなく「自己研鑽」と言われて残業代ももらえない。
金銭的負担
これは、直接的な出費に加えて、研究に取り組む上で必要な経費についてもリストアップしていきます。
直接費用
直接的にかかる経費については、看護部に請求することができます。
- 研究のための資料コピー代
- USBやボイスレコーダーの費用(貸し出し)
- 研究発表会の旅費
- 図書館への資料請求代(郵送料とコピー代)
間接的な費用
- グループメンバーで集まるための会場代および移動費
- 短時間でも注文しなければいけないカフェでのコーヒー代
- テーマ選定のための勉強に使った図書代
- 長丁場になった時の外食費
- ストレスで増えるアルコール代

もしかしたら、請求すれば通るものもあるかもしれません(ない)
看護研究は自己研鑽
確かに、看護研究で学んだことは多い。
私はテーマ選定から行き詰まったクチなので、「看護研究とはなんぞや」の文献検索からスタートした。毎日、夜遅くまで文献を読み込んで、「なぜ俺がやらないといけないのか」について、毎日真剣に考えた。「看護研究はブラック」でテーマ申請してやろうかと思ったくらいでした。

今回、こうして積年の恨みを込めた記事を脱稿できたので、少しは浮かばれるというものです(収益なし)
やらされるものであることをそろそろ認めるべき
これはうちの病院だけかもしれないのですが、「看護研究」はあくまでも自発的なものである、というスタンスを絶対に崩そうとしないんですよね。

残業代を出さないというのであれば、せめて、勤務日に研究に打ち込める日をあてがってくれればいいのですが。
3~4年目程度のペーペーの看護師には何もいうことができませんでした。
看護研究は間違いなく労働時間
医労連曰く、大阪高裁・地裁で時間外労働と認められた業務が以下の通りです。
- 始業前の情報収集
- 業務上の「研修会」「委員会」「会議」
- 臨床指導者の実習記録の点検
- 看護計画・退院・転院サマリー
- 新人看護師への指導
- プリセプター業務
- 看護研究
http://irouren.or.jp/news/oshirase/2014/04/20140418172632.html
常識で捉えても業務
こんな裁判資料をひっぱり出さなくても、各部署から定期的に看護研究チームが駆り出されている現状は「強制力が働いている」結果です。病院自体が倫理観を持って実態を見つめてくれれば、明らかに看護研究は「業務」ですけどね。

これだけ、社会的な動きがあるにも関わらず、未だ「仕方がない」とか「わがまま言うな」みたいな雰囲気があるのが現状ですよね。
看護研究でも残業はちゃんとつけよう
先に書いておきますが、残業はちゃんとつけましょう。そうでなければ、現状が変わらないのはもちろんのこと、未来の後輩たちも苦労することになります。実際に給料に反映されるかどうかは別として、自分が仕事をした、ということには誇りを持って申請しましょう。
看護研究に対する口コミの見解
あえて引用すらしませんが、ネットの書き込みを読むと看護師の認識がいかに甘いか、仕事に対して無頓着なのかがわかります。

仕事中に看護研究するとかありえません。他の患者さんの迷惑になります。

理屈はわかるけど、みんなそうしてきたんだから諦めるしかない

この仕事は信仰がないとできない。宗教だと思って乗り越えて
などなど。みなさん、苦労されているし、考え方の違いはあってもそれは押し付けるものではないな、と感じたところでした。
看護研究を課された時の対応
ちなみに、散々看護研究のことを悪く書きましたが、得られるものも多いのは事実です。ただやりたくない、だけではなく、自分に対してのメリットも考えた上で対応を決められることをお勧めします。
看護研究を自分のために行う
先に述べました通り、「自分の調べたいことをテーマにしたらいい」は通用しないのが看護研究です。
しかし、看護研究をやることで大きなメリットがあるのも事実。自分を納得させて最大限プラス幅を取ることで、ネガティヴな感情を多少和らげることができます。
メリットを生かして自分を育てるポイント
- 文献検索が上手くなる
- 自分の看護技術の根拠を持つ
- 人が読むための文章が書けるようになる
- 外部との人脈を築き上げる
- 外部の看護研究発表会の日に休める(有給)
- 看護師やめるきっかけになる
看護研究の正しい断り方
依頼主が師長バージョンですが、看護研究専門に副部長などが動いている場合は頭の中で置き換えてください。
「今年はやらない」と次は引き受けることを匂わせる
やらない意思は必ず伝えるべきですが、やらないやらないだけだと交渉は平行線をたどります。あえて一つ妥協して、「今はまだ時期ではない」感じでお伝えしましょう。
部署移動を願い出る
看護研究は準備期間があります。他の病院がどれくらいのサイクルで看護研究のお鉢を回しているかはわかりませんが、大きめの総合病院では2年サイクルが一般的のようです。

師長が一番避けたいのは、院内発表に時部署から出せないこと。計画頓挫だけは避けたいのです。
看護研究を原因とするかどうかは別として、部署移動を希望した場合は研究がおろそかになることを恐れて師長が引き下がる場合があります。部署から必ず1グループ発表の場合は、それが崩れると師長としては一番困ったことになります。自分の優先順位をいかに下げるかがポイントになります。
残業代および勤務日のみの研究を願い出る
本当にやりたくない場合は逆効果です。この作戦は、言い換えると「正当性を自分に保ちながら無理難題を押し付けてこいつめんどくせぇなと思わせる」ことが目的となります。
先述の通り、看護研究は業務に含まれますので、残業や勤務時間内に作業することは雇用上なんの問題もないばかりか、むしろこの訴えを安易に退けると裁判沙汰になってしまいます。
師長クラスになると、当然そんなことは知っているし、知っているけれど自分のところだけ特別扱いすることもできないので、「別のやつにしておこうかな」と考えを改める場合があります。
理解のある病院なら逆効果
ただ、病院がその辺りをしっかり整備しており、むしろ看護研究やってくれるなら大歓迎ばりのホワイト病院の場合、この交渉は「こいつやる気あるじゃん」と思われるので逆効果になります。
しかも、きちんとシフトまで組まれて研究に集中させられた日には、できなかった時の言い訳が立たないのでプレッシャーが半端なくなりますね。
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