私は死ぬほどリーダー業務が嫌いだったのですが、世の中には「リーダーはナースルームで人を動かすだけだからラクじゃない?」と考えている人もいます。

天性のリーダー素質でガンガン人を動かしてちゃんと全員を定時帰らせる猛者もいるよね。。。
私がリーダーができない理由に関しては「ADHD看護師とリーダー」という記事で説明しますが、まずは一般的に看護師リーダーは何を求められており、どんなことを考えるべきなのか、なんてことをまとめていきたいと思います。
看護師のリーダーとは
検索で答えが出るものか、と思っていたらリーダーシップ研修の案内が落ちていたので、簡単に要約します。
リーダー看護師は看護実践者としての指導的な役割を持ち、看護チームの中核としてチーム全体が機能するようにする。
なんか、こう書かれるとシンプルで簡単にできそうな感じがしますが、私が実戦レベルにリーダー役割を翻訳してみるとかんな感じ。
これが看護師のリーダーたる姿かと思います。
では、具体的にどんなことなのかをこれから説明していきます。
リーダーシップって何?
まず、一般社会とは少し毛色の異なる看護師。

病院の他の職員は有給使えるのに、有給使えないことに文句言ったら人事に「看護師だけは看護部が全ての実権を握っているから、看護部長に直接文句言ってくれ」って言われるくらいに、別組織です。
リーダーシップとは
リーダーシップ(英語: leadership)とは、指導者としての資質・能力・力量・統率力。
https://ja.wikipedia.org/wiki/リーダーシップ
これを具体化して書き下ろしていくと、以下のような役割・仕事があります。
リーダーシップの言語化
- 組織全体がスムーズに動けるようにする
- 組織の目標を設定する
- 組織全体の知識・スキルが高まるように働きかける
- 組織構成員がメンバーシップを取れるようにする
そして、求められる素質・要素はこんな感じ。
リーダーシップ特性
- 先見の明
- コミュニケーション能力
- 探究心
- 育成能力
- 責任感
- メタ認知
- 行動力
- 忍耐・許容力
- 決断力
資格さえあればなんでもよかったような私にはリーダーの適正なんぞもとよりありませんが、看護師になろう、と強く心に誓って資格取った方は、割とリーダー適性高め。
リーダー業務との違いは
リーダーシップを発揮することと、リーダー業務をこなすことは違います。
リーダー業務はマニュアル

リーダー1年目くらいだと、リーダー役割についた時に「やらないといけない業務」に追われがちですが、師長面談の時に「それじゃあリーダーじゃないんだよね」と釘を刺されます。
リーダー業務は、リーダーがスムーズに動けるように、あるいはリーダー適正のない人間に強引にリーダーとして働かせることができるように定められているだけの業務です。

なんだったら、別にリーダーがやらなくてもよくねという業務もリーダー業務に含められたりしています。
むしろ、リーダーは業務として固定された仕事をこなす暇はなく、常にメンバーが動きやすいようにサポートしているのが理想。

リーダー自身が動きすぎると組織が瓦解するので、いかにメンバーの動きを読み取り、適切な采配ができるのかがポイントになります。
リーダーこそナースルームを死守
というわけで、リーダーの居場所はナースルームです。自分は動かずにひたすらPHSでコールしながらメンバーに指示を出します。なんだったら、師長も動かしてください。
リーダーに求められていること
さらに具体化して、リーダーが何をしたらいいのか、をわかりやすい形で説明していきます。
新人看護師を育てる

プリセプターがいるから任せとけばいいんじゃない?

プリセプター自体がまだ成長過程なので、プリセプターに任せっきりの育成方針は関心しません。というか、ただの育児放棄ですよそれ。
リーダーは新人看護師が成長できるようにサポートするのが大切です。当たり前のことですが、当たり前にできていないリーダーは多いです。周囲のメンバーに声をかけてサポート体制を整えた上で新人に仕事を振り、できたところ・できていないところをフィードバックさせる。
ここで大切なのは、他のメンバーにも新人とか関わらせることで「新人がどこまでできるのか」などを共有し、病棟内で新人を育成していくことです。
2年目こそしっかりとみる
あくまでも私がリーダーの時ですが、2年目看護師ほど注意深く育成すべきだと考えていました。

看護師は2年目ほど腐りやすいんですよね。。。
これ、やる気がある看護師でも少し中だるみするし、元々手にかけなきゃいけない2年目は「自分できるようになった」と成長が止まりやすい。例えば、あえて2年目の後ろに新人をくっつけることで、いい緊張感を与えたり、自分の技術・知識を見直させたりします。

モチベーションの低下しやすい時期だからこそ、もう一度目標を設定させるのも大切です。
業務の最中に、どんなこと苦手?とか聞きながら、やってみたい仕事あったら混ぜてみるのもあり。トライさせやすい環境を整えるのって大事。
ベテランの力を活用する
今、私は看護師じゃないからこそ言えますが。ベテランは力を腐らせてます。このベテランの眠った力を解き放つのが、リーダーの力です。

バイタリティの溢れるベテランさんもいるっちゃいるけど、どこの病院でもベテランを腐らせる働き方しかさせてないから中堅も辞めたくなっちゃうんだよね。
ベテランの看護師経験は、大金を叩いても手に入れられない貴重な資源です。病棟がうまく回るかどうかは、ベテラン看護師のモチベーション次第と言っても過言ではないでしょう。

ただ、ベテランの機嫌を損ねるとチーム全体の指揮も下がるし、リーダーとしても指示系統が乱れやすくなっちゃうから調整の難しいところなんだよね。

特に、ベテランともなると確固たる看護観があったりするからね。周囲と調和できる人ならいいけど、意見が通らないと拗ねちゃう人もいるから、頭を抱えるところ。
この辺りは「業務を均等に割り振る」だけじゃなく、「適性を見ながら最効率化できる」方法を考えなければいけないリーダーの最も難しい部分とも言えます。
「本日の目標」を明確にする
リーダーは組織全体が同じベクトルで動けるように調整する必要があります。
口に出す出さないはあると思いますが、私は「今日はここのオペ出しが難所だから、この時間にインシデントなく乗り越えられれば勲章もんだね」なんて感じで周囲に声掛けしたりしてましたね。
そして、その時間に誰がどのような行動をとっているのか把握しづらくなるので、事前にメンバーの予定を洗い出して、調整かけてもらったりしてました。

あくまでも理想論で、実際には自分がバタバタして周囲にサポートしてもらっていたリーダーでしたけどね。
メンバーの意見を拾い上げる
自分が大変な時に(大変じゃない時にも)業務見直せって言える人もいれば、完全に手が回っていない時にも「大丈夫です」しか言えない人もいます。
これは、メンバー自身から発信できるようになるのが本来であればベストなんですけど、言えないなら言えないなりに情報を拾い上げたりするのもリーダーの大事な仕事です。

私は視野が狭いから「周囲を見渡す」が苦手でしたが、メンバーの言動から「今、たぶんきついな」とかを察して、いいタイミングで本人から内面表出が得られるように働きかけるのも大事なんだろうな、とは思っていました。
展開を予測できる
難易度がぐぐっと上がりますが、看護師の成長を視点・視野で表現すると、以下のような感じになります。
- 自分の業務がわかる
- 自分に関する周囲の業務がわかる(把握する対象が、患者やパートナー看護師に広がる)
- 自分の属するチームの状況が見える(チーム全体の動きが見える)
- 自分のチームの内的な環境要因(人間関係など)が見える(チームを適切に動かす)
- 自分の環境から将来起こりうるリスクまで見える(リスクマネジメントも含めた病棟管理)
リーダーだと3段回目くらいからの視野があればなれます。逆に、認知の幅が自分に限局している場合だと、いくら経験年数を積んでもリーダーとしての適性があるとは言えません。

認知からメタ認知へと広げ、周囲の状況が把握できる視野と、メンバーの心理状況と他者理解、さらに時間軸を未来に伸ばしていくことで、看護師としての視野が広がっていくんだね。
いつ、リーダーになればいいのか
リーダーになれないで悩んでいる人もいると聞きます。

個人的にはリーダーなんてやらなくて済むなら泣いて喜びますけどね。

同期がみんなリーダーやってると、リーダー任せられない自分はできない看護師だ、とか悩む子はいるよね。
リーダーは焦ってなるようなもんではない
本当の意味でのリーダーなんてのは何年かかってもなれない人もいるし、最初っからリーダー気質の強い人もいます。
確かに、一人前になって初めてリーダーが任される、というのはどこの病院・どこの部署でもあると思いますが、リーダーになれないから一人前ではない、というのは考えすぎかもしれません。
冷静に自己分析しよう
自分がリーダーになれない原因を自分で把握できるようになることが、リーダーになるための訓練のひとつです。

つまり、自分がどこが苦手で、何ができないから、どうしたらできるようになるのか、なんてことを考えられるようになってはじめてリーダーとしての一歩が踏み出せるわけで。
少なくとも、他の人と比べて相対的になるものではないので、リーダーになれないと悩んでいるのなら、一度自分の苦手や得意を「客観視」できるようになるといいと思います。
俯瞰と手腕の問題
上述のリーダー特性にもありますが、リーダーの基本は「自分も含めて組織全体を俯瞰できる」ことと、「組織全体を動かす手腕」があるのが大前提です。
リーダー理論を読み解く
看護師はリーダーを避けて通れない職種のひとつです。なので、研修なんかではリーダーシップについて学ぶ機会も多いと思います。

ここでは、そんな研修の事前課題を華麗にこなすことができるように必要な情報を置いておきます。自由にコピペしてラクしちゃってください。
リーダーは先天的な素質か後天的な技能か

私なんて、一生リーダーになれるわけがない。あれは選ばれた人だけがなれるものなんだ。
私はずっとそう考えていましたが、組織のマネージメントを考えるレベルでのリーダー適性なら後天的に獲得できるスキルだというのが一般的な意見です。
業務に落とし込めるのがリーダー
前述にもありましたが、ある意味ではリーダーなんてのは「業務」単位に細分化できるような仕事です。
メンバーの働きぶりなんか「雰囲気でわかる」人もいますが、同レベルでの観察は訓練によって身につけたり、ロジックとして自分の行動に落とし込むことは可能です。
自分が、どのタイプのリーダーとなればいいのかをしっかり把握して、組織に適合する形に調整できるといいですね。
リーダーシップの様々な形
さて、研修なんかではだいたい以下のリーダーシップモデル・理論が例題として出されるはずです。これらに正解はありませんが、自分が目指すべきリーダー像の指標とはなることでしょう。
https://www.kaonavi.jp/dictionary/leadership/
コンセプト理論
- カリスマ型リーダーシップ
- 変革型リーダーシップ
- EQ型リーダーシップ
- ファシリテーション型リーダーシップ
- サーバント型リーダーシップ
みんながみんな「カリスマ」である必要はないし「改革」だって起こすことはない。看護師のリーダーシップの場合は、「EQ」(モチベーション管理)と「ファシリテーション」(中立性)が大事ですね。

私はいつまで経ってもサーバント(召使)でしたけどね。
PM理論
三隅二不二(みすみじゅうじ)氏が提唱したリーダーシップ理論で、パフォーマンス軸(P)とメンテナンス(M)軸によってリーダーシップの4属性を示した理論になります。
PとM軸で4分割する
大文字と小文字のPpMmの組み合わせで表現します。大文字は強化されており、小文字は弱い、と言った感じ。
パフォーマンスが高い場合は、課題達成のために強く働きかけ、メンテナンス(人間関係維持)が高い場合はメンバー間の調整などに尽力を注いでいる、と言った表現になります。

例えば、Pが強く、mが弱い場合は、周囲への配慮は薄いが目標達成のための行動力は高い、なんて感じになります。
看護師はMを軽率にはしないがPが重要
こと、看護師においてはM(メンテナンス)が弱いチームは崩壊しかねないので、人間関係調整は大切ですが、意見を聞きすぎると誰も何もしなくなってしまうので、パフォーマンスで実行力を持たせた方が良かったりもするので、かなり難易度は高めです。
看護師は、とにかく動けることが第一なので、Mに引きずられすぎると肝心のパフォーマンスが発揮できない状況になってしまうので、何にせよ実践(ケア)レベルの質は落とさないようにリーダーシップを発揮していく必要があります。
レヴィンのリーダーシップ類型
- 専制的リーダーシップ
- 自由放任的リーダーシップ
- 民主的リーダーシップ
いわゆる、ワンマンリーダーが専制的、自由放任は部下(メンバー)任せ、民主的はメンバーの意見を拾い上げて目標を設定する、みたいな感じです。
民主的であるに越したことはありませんが、メンバー内のエンパワーメントも異なるため、「平等な意見の拾い上げ」はかなりの難易度です。
マネジメントシステム論
- 権威主義・専制型
- 温情・専制型
- 参画協調型
- 民主主義型
説明が面倒ですが、権威は帝国主義の皇帝をイメージしてもらえれば。温情型は国民思いの良い王様、参画協調は議会の議長、民主主義は民主主義です。
どんな場合でも民主主義であるに越したことはありませんが、組織として個性の強いメンバーを統率して動けるようにするためにはある程度の実験をリーダーが持っていた方がいいと考えられます。

特に、緊急時には命にも関わり時間的な猶予もない決断を強いられる医療現場なので、絶対的な権威からの指令があった方が、メンバーは動きやすかったりします。
組織運営上は、みんなの意見がうまく調和するのが「働きやすい環境」ですけどね。この辺りのバランスの取り方が難しい。
マネジリアル・グリッド理論
- 1.1型(消極型)
- 1.9型(人間中心型)
- 9.1型(仕事中心型)
- 9.9型(理想形)
- 5.5型(中庸型)
完全に飽きてきましたが、数字の意味合いだけ説明すると、人間:業務を比率で表しており、数字が高いほど熱心であるということです。当然、熱意が高い方がいいに決まってますが、組織によってはバランスも大事、ということ。
SL理論
- M1:指示型
- M2:説得型
- M3:参加型
- M4:委任型
仕事志向と人間志向を軸にして4分割したリーダー理論。表を作るのも面倒なので、概ねマネジリアルと構造は一緒だと思ってください。
どのリーダーシップがいいのか
ちょこちょこと解説はしましたが、基本的には「理想のリーダーなんてものはない」というのが答えです。環境とメンバー構成で無限に変容します。ひとつ言えるとすれば「こうあるべき」というものではなく、「状況に合わせて必要なリーダーシップを取る」ことができるのが強い。

でも、リーダーの意見が一貫してないと不信感にもつながるよね。
看護師のリーダーなんてのは毎日変わるものだから、その状況に合わせて、みんなが動きやすいように働きかければいいと思うよ。
師長や病院経営のリーダーシップとなるとまた話は別だし、私はそこまで口を突っ込むつもりはないのでこの辺りでお開き。
リーダー体験記
私も、発達障害発覚前までは、割と教育関連にも力を入れていたのですが、定形発達ではないということがわかってからは、「自分の体験は一般論として強要できるものではない」と考えるようになりました。

ただ、私の体験自体は、どこかの誰かの役には立つとも考えられるので、こうして情報発信しております。
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