2026年度から全国実施となった「こども誰でも通園制度」。障害がある子どもや、たんの吸引・経管栄養・人工呼吸器など医療的ケアが必要な子どもも、利用できるのでしょうか。保護者にとっては、制度上の対象かどうかに加え、「看護師がいるのか」「主治医の指示はどうするのか」「断られたらどこに相談するのか」が切実な問題です。
結論は、障害や医療的ケアの必要性だけで一律に対象外とはなりません。ただし制度の利用対象であることと、希望する事業所に安全に受け入れられることは別です。市町村、事業所、主治医、看護師等が個々の子どもの状態と支援体制を確認し、利用方法を調整する必要があります。
この記事では、こども家庭庁の2026年度の制度資料と2026年3月改訂「実施に関する手引」、国のQ&A、自治体・試行事業の事例を区別して整理します。制度全般の申請や料金は制度概要の記事で解説しています。
結論:対象になるが「どの施設でも医療的ケアに対応できる」わけではない
こども誰でも通園制度は、原則として保育所等に通っていない生後6か月から満3歳未満の子どもを対象とし、保護者の就労要件を問いません。2026年度から全国で給付制度として実施されています。障害や医療的ケアがあることだけを理由に、制度の入口から一律に除外する仕組みではありません。
しかし、「制度上の利用認定」「事業所での受け入れ体制」「個別の医療的ケアと緊急時対応」は別々に確認する必要があります。ある施設で受け入れが難しくても、それだけで子ども自身が制度対象外になるわけではありません。市町村には医療的ケア児等を含めた提供体制を整えていく役割があります。
| 確認する段階 | 何を確認する? |
|---|---|
| 制度の対象 | 年齢・未就園等の一般要件。障害や医療的ケアによる一律除外はない |
| 事業所の体制 | 医療的ケアに対応する人員・設備・安全な受け入れ枠があるか |
| 個別の利用計画 | 主治医の指示、健康状態、家族との合意、緊急時の対応がそろうか |
この3つを混同しないことが、最初のポイントです。
障害児・医療的ケア児はどこまで対象?手帳や児童発達支援の扱い
障害者手帳がなくても、支援の対象になり得る
国の手引は、障害のある子どもの確認について、市町村が判断する場合に障害者手帳の交付の有無だけに限らず、診断書や専門職の意見などを踏まえられるとしています。障害児向けの加算等が用意されていることも、個別の支援体制を整える仕組みの一つです。ただし、加算があることは「全施設で受け入れを保証する」意味ではありません。
児童発達支援の利用と、誰でも通園は両立し得る
2026年度の国のこども誰でも通園制度Q&Aには、児童発達支援センターや児童発達支援事業所の通所給付を受けている子どもについても、本制度の対象要件を満たしていれば対象になると記載されています。児童発達支援を利用しているから自動的に対象外、と考える必要はありません。
一方、誰でも通園を実施する施設・通所先の種類・利用日程・給付や契約の扱いは個別に確認してください。年齢などの一般要件に加え、認定手続きや各事業所の利用調整は必要です。
基本は月10時間までの利用枠ですが、2026〜2027年度には一定の経過措置が設けられており、自治体の実施状況によって時間が異なる場合があります。居住市町村の最新案内を確認しましょう。
相談から利用開始まで:受け入れ可能性は誰がどう判断する?

医療的ケア児の受け入れは、保護者が事業所へ希望を伝えるだけで決まるものではありません。国の手引では、市町村が子どもの状態を把握し、事業者と連携しながら受け入れ可能性を検討するとしています。
家庭・市町村・事業所・主治医や看護師等が情報を持ち寄り、具体的な受け入れ可能性を判断する。これが相談から利用開始までの基本的な考え方です。
| 関係者 | 主な役割 |
|---|---|
| 保護者・家庭 | 必要なケア、体調、生活リズム、持参機器、利用希望を共有する |
| 市町村 | 認定と提供体制、関係機関との調整、事業所の受け入れ可能性の確認 |
| 事業所 | 面談・施設環境・実施者・支援計画・安全手順・受け入れ枠の検討 |
| 主治医・看護師等 | 医学的な指示・専門的評価、ケア実施方法と緊急対応の確認 |
事業者は、実施できる人員や設備がなく、正当な理由により受け入れが困難な場合には、具体的な理由を市町村へ報告する流れが示されています。保護者は「その施設で難しい理由」と「市町村として別の受け入れ先や調整方法を検討できるか」を分けて尋ねることができます。
受け入れの見通しが立った場合も、事業所は子どもに応じた支援計画を作成し、保護者と内容を共有して同意を得たうえで、主治医や関係機関への確認、利用後の継続的な見直しにつなげることが求められています。
看護師配置と医療的ケア:吸引・経管栄養・人工呼吸器はどう考える?
医療的ケアの内容によって、必要な専門職、設備、研修、医師の指示の内容は変わります。たとえば、たんの吸引、経管栄養、人工呼吸器の管理は、いずれも「医療的ケア」と一括りにされますが、同じ人員配置や設備で対応できるとは限りません。
医療的ケアを実施する際は、主治医からの具体的な指示を受け、医療的な疑問が生じた際の相談・連絡先を明確にします。実施担当者には看護師等のほか、法令に定められた研修・認定を受けた特定行為業務従事者が関わる場合もありますが、認定を受けた人が実施できる行為は限定されており、人工呼吸器管理を含むすべての医療的ケアを担えるわけではありません。
| 必要な支援の例 | 施設側で確かめること |
|---|---|
| たんの吸引 | 吸引の実施者・指示・対応可能な場面・緊急時対応 |
| 経管栄養(胃瘻等) | 注入に必要な体制・衛生管理・栄養や食事時間との調整 |
| 人工呼吸器を使用 | 機器の管理・電源・警報への対応・搬送とバックアップ体制 |
| 複数の医療的ケアが必要 | 実施者の資格・重複する業務負担・担当不在時の代替体制 |
この表は処置の手順書ではなく、受け入れ先へ質問する項目です。具体的な実施方法や中止基準は、個別の医師指示と事業所の手順に従ってください。保育士等の通常の配置基準を満たしているだけで、医療的ケアまで提供できると判断することもできません。
「全施設に常勤看護師が必要」「必ずマンツーマンで配置される」といった全国一律の結論にもできません。実際に提供できるケアと支援体制は、子どもと事業所ごとの個別の検討事項です。
安全管理で確認したいこと:健康観察・急変・災害への備え

利用時間が短くても、健康状態の把握や急変時の対応を省略してよいわけではありません。医療的ケアの実施体制に加え、子どもが安心して遊べる環境を整えることが必要です。
安全管理では「いつもと違う状態に気づけること」「担当者が判断に迷ったとき相談できること」「急変時に迷わず連絡・対応できること」の3つが特に重要です。
- 利用前・当日の健康確認:普段の呼吸、顔色、体温、食事・排泄、発作などの変化と、利用可否の判断方法を共有する。
- 医療的ケアの記録:誰がいつ何を行ったかを記録し、保護者への引き継ぎと次回利用につなげる。
- 急変への備え:主治医・保護者・救急搬送先への連絡順、対応担当、医療機器・薬剤等の扱いをあらかじめ決める。
- 停電・災害への備え:電源を要する機器、予備電源、避難経路、避難中のケアを検討する。
- 事故・ヒヤリハット:記録と共有、再発防止の仕組みを確保する。
- 遊び・交流への配慮:安全確保のために活動を狭めるだけでなく、本人の好きな遊びや他児との関わりを一緒に考える。
施設の医療的ケア体制については保育士の負担と安全管理の記事も参考になります。ただし、本記事のような個別の医療的ケアの準備は、一般的な保育の人員配置とは別に確認する必要があります。
通園が難しい場合は?居宅訪問という例外的な選択肢
国の手引では「通園」を基本としつつ、集団生活や外出が困難な状態にある子どもなどについて、市町村や事業所が受け入れ可能性を検討する中で、居宅を訪問する形態も想定しています。感染への配慮や外出の難しさがある家庭では、相談の糸口になり得ます。
ただし、これは誰でも通園制度に居宅訪問の選択肢があるという説明であり、すべての自治体が訪問枠を用意している、希望すれば必ず訪問を受けられるという意味ではありません。専門的な研修を受けた保育従事者や連携機関、安全体制、保護者の理解などが必要となります。
また、国の手引は居宅訪問の形に利用方法が固定されて、子どもが通園できる状態になった後もその機会を失わないよう配慮することを求めています。居宅訪問は、外の世界や他児との出会いへつながる段階的な選択肢として考えることが大切です。
なお、誰でも通園の居宅訪問は、訪問看護や医療型短期入所と目的・実施主体・給付条件が異なります。医療行為の代替やレスパイトの長時間利用を当然に担うものではありません。
受け入れ事例:札幌市の児童発達支援センターと自治体の準備
札幌市「むぎのこ児童発達支援センター」:試行事業の実例
こども家庭庁の2025年公表の試行的事業事例集には、札幌市の「むぎのこ児童発達支援センター」が掲載されています。2024年度の試行事業の事例であり、障害の有無を問わない受け入れや、保育士・看護師・栄養士等が関わる事前面談、多職種連携が紹介されています。
児童発達支援の専門性を持つ事業所が、子どもの特性を踏まえた受け入れを考える例として参考になります。ただし、この事例を根拠に、人工呼吸器・吸引・胃瘻などすべての医療的ケアを誰でも通園枠で実施したと断定することはできません。
横浜市:医療的ケア児加算に必要な書類の公表
横浜市の2026年度の給付事務ページでは、医療的ケア児加算の申請用として「医療的ケア主治医意見書・指示書」が公開されています。これは制度運用で医療的ケアの情報を確認する仕組みがあることを示しますが、受け入れ実績やすべてのケア内容への対応可能性を証明するものではありません。
新潟県:具体的な利用条件は市町村へ
新潟県の制度案内では、月10時間を基本としながら、利用できる時間や実施状況について住んでいる市町村への確認を求めています。医療的ケア児の受け入れ施設や配置についても、まず市町村窓口へ具体的に相談することが必要です。
利用前の確認チェックリスト:家庭から施設へ何を伝える?
問い合わせの前に、医療的ケアの詳細だけでなく、子どもの生活と遊びの様子も整理すると話が進めやすくなります。これは診断のチェックリストではなく、保護者・事業所・医療者の情報共有のたたき台です。

- 制度と窓口:市町村での利用認定、年齢等の対象要件、相談できる実施事業所や居宅訪問の有無。
- 必要な医療的ケア:ケアの種類・頻度、普段の状態、医師の指示書等の要否、使用機器と持参物。
- 人員と施設:看護師等の対応可能時間、実施できるケアの範囲、欠員時の代替体制、研修・設備。
- 毎日の過ごし方:睡眠・食事・栄養・服薬、感覚特性、好きな遊び、安心できる関わり方。
- 安全:急変時の連絡先、緊急搬送、電源・停電、避難、ケア記録と引き継ぎの担当。
- 通園と継続性:利用日・送迎・慣れるまでの段階、活動・他児との交流、利用後の情報共有。
希望する施設で受け入れが難しい場合は、断られた具体的な理由を確認したうえで、市町村の誰でも通園担当窓口に調整を相談してください。必要に応じて、地域の医療的ケア児支援センターや児童発達支援センター、主治医と連携し、代替案や今後の受け入れ準備を検討する方法があります。
まとめ:医療的ケアの安全と「子どもとして遊ぶ機会」を両立させる
誰でも通園制度において障害児・医療的ケア児も対象になり得ることと、実際に安全な受け入れを実現することは分けて考える必要があります。短時間の通園だからといって、医師の指示や実施者の資格、緊急時の備えを省略することはできません。
同時に、医療的ケアを提供できるかどうかだけで子どもの通園を評価するのも十分ではありません。安心できる大人と遊び、子ども同士で関わり、家庭以外の世界へつながる機会をどう作るかという視点も大切です。
2026年度の全国実施後、医療的ケアの種類ごとの実利用児数や、自治体間の受け入れ格差、居宅訪問の利用実績についてはまだ十分な全国データを確認できません。制度の意義を評価するには、受け入れの可否と、その後の子どもの経験・安全を継続して調べる必要があります。
主な参考資料
- こども家庭庁:こども誰でも通園制度について(手引・Q&Aの最新版への入口)
- こども誰でも通園制度の実施に関する手引(2026年3月改訂)
- こども誰でも通園制度 試行的事業事例集(2025年公表)
- 横浜市:令和8年度乳児等通園支援事業の給付について
- 新潟県:こども誰でも通園制度(乳児等通園支援事業)
- こども家庭庁:医療的ケア児等とその家族に対する支援施策



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