ペアレントトレーニングと聞くと、「子育てが下手な親が受ける訓練」「親の接し方を直す治療」のように感じるかもしれません。
子どものADHDについて相談したのに、親へトレーニングを勧められれば、「問題があるのは子どもではなく私だと言われたのか」と傷つくこともあります。
しかし、本来のペアレントトレーニングは、親を評価して合格・不合格を決めるものではありません。
子どもの行動が起きる条件を整理し、伝わりやすい指示、褒め方、環境調整などを練習する家族支援の一つです。
親が原因だから親を変えるのではなく、子どもの生活に最も近い大人が使える方法を増やし、親子が失敗と叱責を繰り返す状況を減らします。
一方で、どの家庭にも同じ方法が合うわけではありません。親自身にADHDがある場合、毎日の記録、複数のルール、一貫した実践といったプログラムの要求が、新たな負担になることもあります。
この記事では、ペアレントトレーニングで実際に何をするのか、体験者が感じやすい戸惑い、研究で分かっている効果と限界、日本で利用するときの課題、親子ともにADHDがある家庭へ必要な支援の形を整理します。
- ペアレントトレーニングは親を責めるための訓練ではない
- 子どもの行動を観察し、関わり方と環境を具体的に変える
- 子どもの症状を完全になくす方法ではない
- 親自身のストレスや有能感にもよい変化が期待される
- 親にADHDがある場合は、実践方法の簡略化や個別調整が必要
- ペアレントトレーニングとは何をする支援なのか
- なぜ子どもではなく親がトレーニングを受けるのか
- ペアレントトレーニングを受けると何が変わるのか
- 実際に参加すると戸惑いやすいこと
- 親自身にADHDがあるとペアレントトレーニングは難しいのか
- 日本ではペアレントトレーニングを受けられないのか
- 海外のガイドラインはペアレントトレーニングをどう位置づけているか
- 今後の日本に必要な親子支援を考える
- ペアレントトレーニングが合いやすい家庭
- ペアレントトレーニングだけでは足りない状態
- 日本でペアレントトレーニングを探す方法
- 参加前に伝えておきたい親側の困りごと
- ペアレントトレーニングについてのよくある質問
- まとめ:親を変えるのではなく、親子が使える方法を増やす
- 参考資料
ペアレントトレーニングとは何をする支援なのか
ペアレントトレーニングは、子どもの行動を理解し、家庭での対応方法を保護者が学ぶ心理社会的な支援です。
医療機関、発達支援機関、福祉施設、自治体、教育機関などで実施されることがあります。
名称、対象年齢、回数、内容は実施機関やプログラムによって異なります。数回の講座形式もあれば、数か月かけてグループで練習するもの、個別に家庭の問題を扱うものもあります。
一般的には、次のような内容を扱います。
| 扱う内容 | 家庭での例 |
|---|---|
| 行動を具体的に見る | 「だらしない」ではなく「声をかけてから10分間、着替えを始めなかった」と記録する |
| 行動の前後を確認する | 何が起きた後に癇癪が始まり、その後周囲がどう反応したかを見る |
| 望ましい行動へ注目する | 全部終わるまで待たず、最初の一歩ができた段階で具体的に伝える |
| 指示を分かりやすくする | 「ちゃんとして」ではなく「連絡帳をランドセルに入れて」と一つだけ伝える |
| 環境を調整する | 忘れ物を叱る代わりに、持ち物の定位置と確認方法を決める |
| 結果を一貫して扱う | その日の親の気分ではなく、事前に決めた対応を使う |
中心にあるのは、子どもの人格ではなく、観察できる行動と環境を扱う考え方です。
「何度言っても聞かない子」と評価するのではなく、どのような言い方なら伝わり、どの条件で行動しやすくなるかを試します。
なぜ子どもではなく親がトレーニングを受けるのか
ペアレントトレーニングを勧められた親が、「私の育て方が原因だと言われた」と感じるのは不自然ではありません。
しかし、親が参加する理由は、親がADHDを作ったからではありません。
子どもは、診察室や支援施設で過ごす時間より、家庭で過ごす時間の方が長くなります。家庭で繰り返される支度、食事、片付け、宿題、ゲームの終了などに使える方法を親が知ることで、練習機会を日常生活の中へ増やせます。
また、年齢の低い子どもへ「自分で衝動を抑え、計画的に行動しなさい」と教えるだけでは、実行が難しい場合があります。
そのため、子どもの能力が育つまで、周囲の大人が指示、時間、物の配置、成功しやすい課題量を調整します。
これは親に責任を押しつける考え方ではなく、子どもだけへ自己管理を求めないための支援でもあります。
「親が変われば子どもが治る」という話ではない
ペアレントトレーニングによって、ADHDという神経発達上の特性そのものが消えるわけではありません。
家庭での衝突、反抗的な行動、指示の伝わりにくさ、親のストレスなどが改善しても、学校での注意や整理の難しさには別の支援が必要な場合があります。
薬物療法、子ども本人への心理支援、学校での環境調整、学習支援などと組み合わせることもあります。
親の関わり方だけですべてを解決しようとしないことが重要です。
ペアレントトレーニングを受けると何が変わるのか
研究では、行動的ペアレントトレーニングによって、子どもの行動上の問題、親の関わり方、親の有能感などが改善する可能性が報告されています。
長期的な効果を調べたメタ分析では、介入終了後も、保護者が評価した子どものADHD症状や行動上の問題、肯定的な養育などに改善が見られました。
ただし、研究結果の見え方は、誰が子どもの行動を評価したかによって異なります。
親の評価では改善が見られても、教師の評価では明確でない研究があります。家庭で使う方法を学ぶ支援であるため、家庭で変化が見えやすいことは不思議ではありません。
また、すべての家庭で同じ効果が得られるわけではありません。
- 子どもの年齢や特性
- 反抗的な行動や別の発達・精神面の問題
- 親のADHD、うつ、不安、睡眠不足
- 家庭内の協力者
- プログラムへの参加や家庭での実践のしやすさ
- 学校や支援機関との連携
ペアレントトレーニングを受ければ、すぐに子どもが指示へ従うというものではありません。
家庭で起きている問題を整理し、親子が使える方法を少しずつ増やす支援として考えるのが現実的です。
実際に参加すると戸惑いやすいこと
ペアレントトレーニングの説明を読むと、褒める、短く指示する、落ち着いて対応するといった、当たり前の内容に見えるかもしれません。
ところが、家庭で実践すると簡単ではありません。
できていない親だと評価されるように感じる
子どもの困った行動を記録すると、自分の叱り方や家庭内の混乱も見えるようになります。
支援者から「もっと具体的に褒めましょう」「指示を一つにしましょう」と言われると、今までの育児を否定されたように感じることがあります。
本来、記録は親の失敗を採点するためのものではありません。
家庭のどこへ支援を置けばよいか探すための情報です。説明を受けても責められている感覚が強い場合は、その感覚を支援者へ伝えて構いません。
褒めることが不自然に感じる
毎日できて当然と思っている行動を褒めることに、抵抗を感じる親もいます。
「靴を履いただけで褒めていたら甘やかしになる」「わざとらしくて子どもに見抜かれる」と感じるかもしれません。
ペアレントトレーニングでいう肯定的な反応は、何でも大げさに褒めることとは限りません。
「自分で靴を持ってきたね」「声をかけた後に始められたね」のように、できた行動を短く言葉にする方法もあります。
親子に合わない表現を無理に続けるのではなく、自然に使える言葉へ調整します。
家庭での宿題が新たな負担になる
プログラムによっては、子どもの行動記録、褒めた回数、指示の出し方などを家庭で練習します。
仕事、家事、通院、学校対応ですでに疲れている親にとって、毎日の記録は簡単ではありません。
記録を忘れると、「トレーニングさえ続けられない」と自己評価が下がる場合があります。
記録が続かないときは、親の意欲不足だけでなく、課題の量や方法が家庭に合っているかを見直す必要があります。
ほかの親の話に救われることも、つらくなることもある
グループ形式では、「困っているのは自分だけではなかった」と感じられることがあります。
日本の母親を対象にした小規模研究でも、同じような困難を持つ保護者と話せるグループ形式が肯定的に受け止められ、ADHDについての説明や保護者自身への支援を増やしてほしいという要望が示されました。
一方で、家庭状況や子どもの状態を他の参加者と比べ、落ち込む人もいます。人前で家庭の問題を話すことに抵抗がある場合もあります。
集団形式が合わないから、支援を受ける資格がないわけではありません。個別、オンライン、短時間の相談など、別の形式を選べることが望まれます。
親自身にADHDがあるとペアレントトレーニングは難しいのか
親自身にADHDがあっても、ペアレントトレーニングを利用できます。
ただし、一般的なプログラムが親へ求める能力と、ADHDの親が苦手とすることが重なる場合があります。
| プログラムで求められること | 親のADHD特性と重なり得る困難 | 必要な調整 |
|---|---|---|
| 決まった日時に参加する | 予定管理、遅刻、持ち物 | 事前通知、オンライン参加、振替 |
| 説明を聞きながら記録する | 注意の維持、ワーキングメモリ | 短い資料、録画、要点の視覚化 |
| 家庭で毎日練習する | 習慣化、開始、継続 | 課題を一つに絞る、リマインダー |
| 同じ対応を続ける | 衝動性、感情調整、その日の余力 | 失敗を前提に再開方法を決める |
| 複数の行動を記録する | 整理、記録用紙の管理 | 一項目だけ、スマートフォン入力 |
従来型の行動的ペアレントトレーニングでは、親にADHD症状がある家庭で効果が小さくなる可能性が指摘されてきました。
これは、ADHDの親に支援が効かないという意味ではありません。
育児と同様に、トレーニング自体も注意、計画、記憶、感情調整を多く要求するため、支援方法が親の特性に合っていない可能性があります。
ADHDの親向けに調整したプログラムも研究されている
スウェーデンでは、ADHDのある親を対象に調整されたIPSAというペアレントトレーニングの無作為化比較試験が行われています。
3歳から11歳の子どもを持つADHDの親109人を対象とした研究では、通常の支援だけを受けたグループと比べ、IPSAへ参加した親の育児に対する自己効力感が大きく改善しました。
プログラムを開始した49人のうち47人が修了しており、短期的な受け入れやすさも示されています。
ただし、追跡期間は介入後1か月半から3か月程度であり、長期的な効果や通常の医療・福祉現場で同じ結果になるかは、今後の検討が必要です。
この研究が示す重要な点は、「親にADHDがあるから一般的な子育て支援を諦める」のではなく、支援する側が親のADHDに合わせて方法を変えるという発想です。
日本ではペアレントトレーニングを受けられないのか
日本でもペアレントトレーニングは実施されています。
国の発達障害支援に関する事業では、実践ガイドブックの作成や、地域で普及させるための支援者向け研修が行われています。
医療機関、児童発達支援事業所、発達障害者支援センター、自治体の子育て支援、大学や研究機関などが、独自のプログラムを実施している場合もあります。
一方で、全国どこでも同じプログラムを同じ条件で受けられるわけではありません。
- 実施地域が限られている
- 開催回数が少ない
- 対象年齢や診断の有無に条件がある
- 平日日中の参加が必要
- 保護者の一方しか参加できない
- 待機期間がある
「日本にはない」というより、必要な人が地域で見つけにくく、継続して参加しにくいことが課題です。
日本向けに文化的な調整を行った研究もある
海外で開発されたプログラムを、そのまま日本へ導入すればよいとは限りません。
沖縄科学技術大学院大学などの研究では、ADHDの子どもを持つ日本の母親の意見を取り入れ、英国で開発されたNew Forest Parenting Programmeを日本向けに調整する試みが行われました。
参加した母親からは、グループで経験を共有できることへの肯定的な反応に加え、ADHDの原因や特性に関する説明、親自身を支える時間、ADHDに特化した練習を増やしてほしいという意見がありました。
ここから分かるのは、海外の技法を翻訳するだけでは足りないということです。
日本の家庭が持つ学校との関係、母親への育児負担の偏り、相談への抵抗、家族内の役割なども含めて調整する必要があります。
海外のガイドラインはペアレントトレーニングをどう位置づけているか
英国やオーストラリアなどのガイドラインでは、ペアレントトレーニングはADHD支援の選択肢として位置づけられています。
ただし、親だけへ対応を任せるのではなく、子どもの年齢、併存する問題、学校環境、家族の状況を含む包括的な支援の一部として扱います。
| 共通する考え方 | 意味 |
|---|---|
| 家族の必要に合わせる | 決められた方法を全家庭へ同じ形で押しつけない |
| 強みを基盤にする | 親のできていない点だけでなく、機能している関わりを活かす |
| 希望と自己決定を支える | 支援者が正解を命令するのではなく、家庭が方法を選べるようにする |
| 家庭以外も調整する | 学校、医療、福祉などと役割を分担する |
| 親の負担も評価する | 子どもの行動だけでなく、親のストレスや生活状況を確認する |
オーストラリアのガイドラインでは、親・家族トレーニングは、本人と家族の必要に合い、強みに基づき、希望や主体性を育てる内容であるべきだとされています。
また、すでに強いストレスを抱えている家族に対し、養育方法や家族構造を評価すること自体が負担になり得るため、親への支援も必要だとしています。
「正しい育児を覚えてください」ではなく、「この家庭が実行できる方法を一緒に作る」という価値観です。
今後の日本に必要な親子支援を考える
日本でペアレントトレーニングを広げるなら、講座の数を増やすだけでは足りません。
親自身にADHDや別の発達特性があること、仕事やきょうだいの育児で時間がないこと、家庭に協力者がいないことを前提にした設計が必要です。
以下は、国内外の研究やガイドラインから考えられる今後の方向性です。
親を子どもの治療装置として扱わない
親が家庭で技法を実践すれば子どもが改善する、という結果だけを求めると、親は支援者ではなく、無償の治療担当者になります。
親自身の睡眠、仕事、感情、夫婦関係、ADHD治療、相談相手の有無も支援対象に含める必要があります。
親が少し楽になり、自分にもできると感じられること自体を、重要な成果として扱う視点が必要です。
診断前から使える支援にする
発達外来の予約や診断を待つ間にも、親子の衝突は続きます。
診断の有無だけで利用を分けず、具体的な生活上の困りごとがある家庭へ、短い心理教育や環境調整の相談を提供できる形が望まれます。
オンライン・個別・短時間を選べるようにする
決まった曜日に会場へ通う集団形式だけでは、仕事を持つ親、地方に住む親、集団で話すことが苦手な親は参加しにくくなります。
対面とオンライン、集団と個別、連続講座と一回ごとの相談を組み合わせ、家庭の事情に合わせて選べることが必要です。
親のADHDに合わせて情報を少なくする
一度に多くの技法を教えるより、今週取り組むことを一つに絞り、短い資料と具体例を残す方が実践しやすい家庭があります。
できなかった週を失敗とせず、どこで止まったかを一緒に確認し、再開方法を用意することも重要です。
学校や園も同じ考え方を共有する
家庭で短く具体的な指示を練習しても、学校では一斉指示だけで行動を求められる場合があります。
親だけに技法を教えるのではなく、学校や園、放課後等デイサービスなどと、子どもに伝わる方法を共有することが必要です。
親子の療育は、家庭の中だけで完結するものではありません。
ペアレントトレーニングが合いやすい家庭
次のような困りごとがある場合、ペアレントトレーニングが選択肢になります。
- 同じ場面で毎日叱っている
- 指示を出すほど子どもが反発する
- 褒めたいが、何を褒めればよいか分からない
- 家庭のルールが日によって変わる
- 朝、宿題、片付けなど特定の場面を改善したい
- 子どもの行動を人格の問題として考えてしまう
- 親自身の怒りや無力感が強くなっている
診断名があるかより、家庭で具体的な困りごとがあり、関わり方や環境を見直したいかが判断材料になります。
ペアレントトレーニングだけでは足りない状態
ペアレントトレーニングは、すべての家庭問題を解決する方法ではありません。
次のような場合は、別の支援や安全確保を優先する必要があります。
- 親子間に身体的な暴力や重大な安全上の問題がある
- 子どもに自傷、強い抑うつ、不登校などがある
- 親に強いうつ、不安、依存症、自傷他害の危険がある
- 夫婦間暴力や家庭内の安全問題がある
- 学習障害や睡眠障害など、別の評価が必要である
- 学校環境が大きな原因なのに、家庭だけへ対応を求められている
危険が差し迫っている場合は、通常の講座への参加を待たず、医療機関、児童相談所、自治体の相談窓口などへつながってください。
また、支援者から親を一方的に責められる、家庭の事情を無視した課題を強制される、疑問を伝えても説明されない場合は、そのプログラムが家庭に合っているかを見直す必要があります。
日本でペアレントトレーニングを探す方法
地域によって名称が異なるため、「ペアレントトレーニング」だけでなく、次の窓口や言葉でも確認します。
- 市区町村の発達相談・子育て相談
- 発達障害者支援センター
- 児童発達支援事業所
- 医療機関の家族教室
- 保健センター
- 教育センターや特別支援教育相談
- ペアレントプログラム
- 保護者向け行動支援講座
問い合わせるときは、次の点を確認します。
- 対象となる子どもの年齢
- 診断がなくても参加できるか
- 集団か個別か
- 回数、曜日、所要時間
- 費用
- 欠席や振替への対応
- 親自身にADHDがある場合の配慮
- 学校や医療機関との連携が可能か
発達障害者支援センターでは、診断がない段階でも本人や家族から相談を受けられる場合があります。実際の対象や紹介先は地域によって異なるため、所在地を管轄するセンターへ確認してください。
参加前に伝えておきたい親側の困りごと
親自身にADHDがある、またはその傾向を感じる場合は、最初に伝えて構いません。
- 長い説明を聞き続けることが難しい
- 紙の記録をなくしやすい
- 毎日同じ時間に練習することが難しい
- 複数の宿題があると始められない
- 子どもが反発すると感情的になる
- 集団で家庭の話をすることに抵抗がある
- 仕事やきょうだいの事情で欠席する可能性がある
これは言い訳ではなく、支援方法を調整するための情報です。
支援を受ける側だけがプログラムへ合わせるのではなく、プログラムも親子の特性と生活へ合わせる必要があります。
ペアレントトレーニングについてのよくある質問
- Qペアレントトレーニングは親の育て方が悪い人向けですか?
- A
親の善悪を判定するためのものではありません。子どもの行動を具体的に観察し、伝わりやすい指示や環境調整を学ぶ支援です。
親が原因だから受けるのではなく、親子の衝突や生活上の困りごとを減らす方法を増やすために利用します。
- Q子どもにADHDの診断がなくても参加できますか?
- A
診断前の子どもの保護者を対象とする講座もありますが、条件は実施機関によって異なります。
市区町村の発達相談、発達障害者支援センター、児童発達支援事業所などへ、診断前でも利用できる保護者支援があるか確認してください。
- Q親にADHDがあっても続けられますか?
- A
利用できますが、記録、予定管理、家庭での反復練習などが負担になる場合があります。
課題を一つに絞る、スマートフォンで記録する、資料を短くする、欠席時の補助を受けるなど、必要な調整を支援者へ相談してください。
- Qペアレントトレーニングを受ければ薬は必要ありませんか?
- A
ペアレントトレーニングと薬物療法は役割が異なります。年齢、症状、生活上の支障などによって、環境調整、心理社会的支援、学校支援、薬物療法を組み合わせることがあります。
薬の開始・中止・変更は家庭だけで判断せず、医師へ相談してください。
- Qグループで家庭の話をすることに抵抗があります。
- A
集団形式が合わない人もいます。参加前に、話したくない内容をどこまで求められるか、個別相談やオンライン形式があるかを確認してください。
集団へ参加できないことと、支援を必要としていないことは同じではありません。
- Qペアレントトレーニングで効果を感じられないときはどうしますか?
- A
技法の実践不足と決めつけず、対象としている行動、課題量、親の負担、学校環境、子どもの併存する問題などを見直します。
家庭だけでは変えられない問題もあります。医療、学校、福祉など別の支援を追加する必要がないか、担当者と相談してください。
まとめ:親を変えるのではなく、親子が使える方法を増やす
ペアレントトレーニングは、親の育て方を責めるためのものではありません。
子どもの行動を人格ややる気の問題として扱わず、どのような条件で起き、どのような伝え方や環境なら行動しやすいかを学ぶ家族支援です。
研究では、子どもの行動上の問題、肯定的な親の関わり、親の有能感などへの効果が報告されています。
一方で、子どものADHDをなくす方法ではなく、学校など家庭外の困難へは別の支援が必要な場合があります。
親自身にADHDがある家庭では、一般的なペアレントトレーニングの記録、予定管理、継続的な実践が負担になることがあります。
必要なのは、親が努力してプログラムへ適応することだけではありません。課題を減らす、情報を見えるようにする、オンラインや個別形式を選ぶなど、支援側も親の特性へ合わせることです。
日本にも実践例や公的な普及事業はありますが、地域によって利用しやすさに差があります。
今後は、子どもを変える技法だけでなく、親自身のメンタルヘルスやADHD、仕事、家族構成を含め、親子を一つの生活単位として支える仕組みが求められます。
ペアレントトレーニングの目標は、完璧な親になることではありません。
怒る回数を一度減らす。伝わる指示を一つ見つける。できた行動へ気づく。家庭だけで抱えず相談する。
親子が失敗から戻れる方法を、少しずつ増やすことに意味があります。
参考資料
- 発達障害ナビポータル:ペアレント・トレーニングの地域普及をめざして
- 発達障害ナビポータル:注意欠如多動症
- NICE:Parent training programmes
- Australian ADHD Clinical Practice Guideline:Parent and Family Training
- Doffer DPA, et al. Sustained improvements by behavioural parent training for children with ADHD. 2023.
- Lindström T, et al. Parent training tailored for parents with ADHD: a randomized controlled trial. 2025.
- OIST:New Behavioral Therapy to Support Japanese Mothers of Children with ADHD


コメント