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子どもの「ぼーっとする」はてんかん発作なのか、不注意特性なのか

「授業中に何度もぼんやりしています」

学校からそう言われても、家庭ではいつもの不注意にしか見えないことがあります。

発作は薬で落ち着いているはずなのに、宿題には時間がかかる。薬を増やしてから眠そうにも見える。主治医からは「発作は落ち着いています」と言われる一方、学校からは「集中力がありません」と指摘される。

このような状況では、保護者も「発作を見逃しているのでは」「発達障害なのかもしれない」「薬の影響では」と迷ってしまいます。

この記事では、てんかんのある子どもに見られる「ぼーっとする」「忘れる」「勉強が遅れる」といった困りごとを、発作・薬・睡眠・発達特性などに分けて整理します。

なお、家庭で原因を診断するための記事ではありません。観察した内容を具体的に記録し、小児神経科、発達支援、学校をつなぐための記事です。

この記事で紹介する事例は、複数の研究や保護者の報告をもとに組み立てた複合事例です。特定の実在人物の体験談ではありません。

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先に結論|「発作か発達障害か」の二択では考えない

てんかんの子どもが集中できないときは、次のような原因が重なっている可能性があります。

  • 短時間のてんかん発作
  • 発作が終わったあとの疲労やぼんやり
  • 抗てんかん発作薬の影響
  • 睡眠不足や夜間の発作
  • ADHDなどの発達特性
  • 記憶、言語理解、処理速度などの学習上の弱さ
  • 欠席や授業の中断による学習の遅れ
  • 学校での緊張や失敗体験

大切なのは、どれか一つに決めつけないことです。

てんかんのある子どもでは、一般の子どもよりADHD、学習障害、自閉スペクトラム症などの神経発達上の問題が多いことが知られています。NICEのてんかん診療ガイドラインも、発作だけでなく、認知機能、発達、学習、心理面を日常診療のなかで確認するよう勧めています。問題ない」とも、「集中できないからADHDだ」とも限りません。

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てんかんと発達障害はなぜ一緒に見つかることが多いのか

てんかんと発達障害はなぜ一緒に見つかることが多いのか

てんかんの子どもではADHDが珍しくない

2024年に発表された46研究のメタ解析では、てんかんのある子どものADHD併存率は全体で30.7%と推定されました。

ただし、この数字には医療機関を受診している子どもを中心とした研究も含まれています。研究場所やADHDの評価方法による差が大きく、すべてのてんかん児にそのまま当てはめられる割合ではありません。のは、「てんかんの子どもの3人に1人が必ずADHDになる」ということではありません。

てんかんの診療中であっても、注意や学習の問題を別の課題として確認する価値がある、ということです。

発作だけが発達の問題を起こすわけではない

てんかんと発達障害の関係は、単純な原因と結果では説明できません。

考えられている背景には、次のようなものがあります。

  • 遺伝的要因や脳の構造的変化が、発作と発達の両方に関係する
  • 頻繁な発作やてんかん性脳波が、学習や発達を妨げる
  • 薬による眠気や認知面の変化が、学習に影響する
  • 睡眠障害や夜間発作によって、日中の集中力が低下する
  • 通院、欠席、活動制限、不安などが学校生活に影響する
  • もともとの発達特性が、てんかんの症状として扱われている

特に一部の重いてんかんでは、もともとの病気による発達への影響と、頻繁な発作や脳波異常による影響が重なります。

一方で、すべての小児てんかんが発達性てんかん性脳症に該当するわけではありません。てんかんがあるという理由だけで、今後の発達を悲観する必要もありません。る」ときに考えられること

「ぼーっとする」という言葉だけでは、実際に何が起きているのか分かりません。

保護者や学校が確認したいのは、診断名ではなく、始まり方、終わり方、反応、持続時間、前後の様子です。

考えられる原因見られることがある様子観察したいポイント
欠神発作突然動きや会話が止まり、短時間で元に戻る始まりと終わりが急か、同じ形で繰り返すか
焦点意識減損発作反応が乏しくなり、口や手を無意識に動かすことがある何分続いたか、発作後に混乱や眠気があるか
ADHDなどの不注意課題から注意が外れる、指示を聞き漏らす課題や場所によって差があるか
薬による影響眠そう、反応が遅い、言葉が出るまで時間がかかる開始・増量した時期と変化が一致するか
睡眠不足朝から眠い、機嫌が悪い、集中が続かない就寝・起床時間、夜間の目覚め、いびき
学習上の困難難しい課題になると止まる、指示を途中で忘れるどの教科・課題・指示で起きやすいか
発作後の疲労発作後に眠る、反応が鈍い、頭痛を訴える発作から回復するまでの時間
不安やストレス特定の授業や人間関係で固まる曜日、授業、場所、人との関係

この表だけで原因を見分けることはできません。

例えば、声かけに反応したから発作ではない、反応しなかったから発作だ、と決めることもできません。複数の情報を集め、必要に応じて脳波検査や発達・認知面の評価と合わせて判断します。

欠神発作は「話を聞いていない」と誤解されることがある

欠神発作では、突然それまでの動作が止まり、短時間反応がなくなったあと、何事もなかったように元の行動へ戻ることがあります。

目立つけいれんがないため、授業中の不注意や空想と区別しにくい発作です。

ただし、すべての「ぼんやり」が欠神発作ではありません。焦点発作、眠気、不注意、理解できない課題から注意が外れている状態などでも、似た様子が見られます。

日本てんかん協会も、けいれんのない発作では、いつ、誰が、何を見て異変に気づいたか、行動がどのように変化したかを具体的に記録するよう案内しています。や学習の問題が残ることがある

「発作が止まれば勉強も元に戻る」とは限らない

保護者にとって戸惑いやすいのが、発作は減ったのに学習面が改善しないケースです。

  • 文章題の意味がつかめない
  • 板書が間に合わない
  • 複数の指示を途中で忘れる
  • 一度覚えたことを思い出せない
  • 宿題に何時間もかかる
  • 学年が上がるほど遅れが目立つ

新規発症または発症から間もない小児てんかんを5~6年間追跡した研究では、診断に近い時期から、注意、反応抑制、処理速度、算数、微細運動などに弱さが見られる子どもがいました。

多くの認知機能は時間とともに一律に悪化したわけではありませんが、最初にあった弱さが大きく改善せず続くことも示されています。しも、長く発作が続いた結果や、薬を飲み始めた結果だけではありません。

もともと発作と共通する神経発達上の背景があり、診断前から注意や学習へ影響している可能性もあります。

欠神発作がなくなっても注意の弱さが残る例がある

小児欠神てんかんを対象とした研究では、治療を始める前から注意機能に弱さがある子どもが多く、発作が消失したあとも注意の問題が残る例が確認されています。に起こりうることを示しています。

  • 欠神発作が授業を短時間ずつ中断している
  • 発作とは別に、持続的な注意機能の弱さがある

「発作なのかADHDなのか」という二択ではなく、両方が重なっている可能性も考える必要があります。

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薬を増やしたあとに眠気や行動の変化があったら

抗てんかん発作薬の開始や増量後に、次のような変化を感じることがあります。

  • 朝起きにくくなった
  • 日中の眠気が強くなった
  • 反応が遅くなった
  • 宿題に以前より時間がかかる
  • 怒りっぽくなった
  • 落ち着きがなくなったように見える

ただし、薬を変更した時期には、発作、睡眠、学校生活、体調も変化している可能性があります。

「すべて薬の副作用だ」と決めつけるのではなく、薬の変更日と生活上の変化を並べて記録することが重要です。

ILAEの合意文書では、てんかんのある子どものADHDスクリーニングを、学齢期またはてんかん診断時から定期的に行い、抗てんかん発作薬を変更したあとにも再評価することが提案されています。学校で困難がある場合には、正式な認知機能検査も検討すべきとしています。したり中止したりしない

薬の影響が疑われても、自己判断による減量や中止は避けてください。

急な変更によって、発作が再発したり増えたりする可能性があります。

主治医へ伝えるときは、単に「薬が合わない気がします」と話すよりも、次のように具体化すると状況が伝わりやすくなります。

6月10日に薬を増量してから、午前中の居眠りが週1回程度から毎日になりました。発作は見ていません。学校でも2時間目から眠そうだと言われています。就寝時間は以前と変わりません。

薬を変更すべきかどうかは、発作の状態、薬の効果、生活への影響を含め、主治医と一緒に判断します。

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家庭と学校で記録したい9項目

家庭と学校で記録したい9項目

診察室で問題の場面が再現されることは多くありません。

だからこそ、家庭と学校での記録が役立ちます。

記録項目記入例
日時7月15日、10時20分ごろ
起きた場所算数の授業中
直前の行動先生の説明を聞いていた
始まり方急に鉛筆が止まった
反応名前を2回呼んだが返事なし
身体の変化目は正面、まぶたが少し動いた
持続時間約8秒
終わったあとの様子すぐに書き始めたが説明部分は覚えていなかった
関連情報前夜の睡眠8時間、薬の変更なし

学習上の困りごとについては、さらに次の内容を記録します。

  • 苦手な教科や課題
  • 一度に理解できる指示の数
  • 宿題にかかった時間
  • 途中で休憩した回数
  • 欠席や早退
  • 発作後の疲労時間
  • 午前と午後の違い
  • 家庭と学校での違い

日本てんかん協会は、発作の時間、意識状態、身体の動き、発作後の様子などを順番に記録することを勧めています。安全を確保できる状況では、動画が診断や治療方針の検討に役立つ場合もあります。あるときは、撮影より安全確保を優先してください。学校で撮影する場合は、ほかの児童のプライバシーにも配慮が必要です。

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学校には「集中力がない」より具体的な場面を聞く

学校から「集中力がありません」と言われたら、次のように確認してみましょう。

  • 何時間目に多いですか
  • どの教科で起きますか
  • 動作は急に止まりますか
  • 名前を呼ぶと反応しますか
  • 何秒または何分続きますか
  • 同じ日に何回ありますか
  • 終わったあと、直前の説明を覚えていますか
  • 眠そうですか、それとも覚醒していますか
  • 課題を簡単にすると取り組めますか
  • 発作後や体育後に多いですか

重要なのは、子どもの性格を評価してもらうのではなく、観察できた行動を共有してもらうことです。

てんかんの学習への影響は見えにくい

2022年に子ども、保護者、学校職員を対象に行われた調査では、保護者の85%が、てんかんが子どもの学習または行動に影響していると回答しました。

一方、学校職員が影響を認識していた割合は、学習面が61%、行動面が45%でした。調査地域や参加者が限られるため日本の学校へそのまま当てはめることはできませんが、保護者と学校の認識に差が生じうることを示しています。管理に注目が集まりやすい一方、次のような問題は見えにくいことがあります。

  • 疲れやすさ
  • 記憶の弱さ
  • 処理速度の遅さ
  • 指示を保持する難しさ
  • 発作や受診による授業の抜け
  • 失敗が重なることによる自信の低下

2025年の保護者フォーカスグループ研究でも、学校職員の知識や人員配置のばらつき、個別の教育支援を得る難しさ、保護者が一人で学校との調整を担う負担が報告されています。慮の例

必要な支援は、発作型や学習特性によって異なります。

次の内容を「すべて実施してもらう条件」ではなく、学校と話し合う候補として考えます。

  • 指示を一度に詰め込まず、一つずつ伝える
  • 口頭指示を板書やメモでも示す
  • 課題やテストの時間に余裕を持たせる
  • 発作や受診で抜けた授業を補う方法を決める
  • 疲労が強い時間帯には短い休憩を入れる
  • 宿題の量より、学習目標を優先する
  • 発作らしい場面の記録方法を統一する
  • 本人の前で「集中力がない」「怠けている」と評価しない
  • 発作時の対応表と学習支援を別々に作成する

学校へ病名だけを伝えても、必要な支援が具体化しないことがあります。

「てんかんがあります」に加え、「短い指示は理解できますが、二つ以上の指示を保持するのが難しいです」など、生活上の特徴を共有することが大切です。

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小児神経科・発達外来・学校へ何を相談するか

保護者から見ると一つの困りごとでも、相談先によって確認できる内容が異なります。

小児神経科・てんかん診療の主治医

主に相談する内容は次のとおりです。

  • 今見られている状態が発作の可能性を含むか
  • 脳波検査や動画確認が必要か
  • 発作後の疲労や意識変化ではないか
  • 薬の開始・増量と変化が関係しているか
  • 夜間発作や睡眠中の脳波を確認する必要があるか

発達外来・児童精神科・心理職

主に相談する内容は次のとおりです。

  • ADHDなどの発達特性があるか
  • 注意、記憶、言語理解、処理速度に偏りがあるか
  • 読み書きや計算に特定の苦手さがあるか
  • 学校で必要な配慮は何か
  • 心理検査や認知機能検査が必要か

学校・園

学校には次の役割をお願いできます。

  • 問題が起きた場面を具体的に観察する
  • 家庭では分からない集団場面での特徴を共有する
  • 発作時の安全確保と連絡方法を決める
  • 学習上の配慮を検討する
  • 医療機関へ伝える情報を記録する

NICEは、てんかんのある人に発達、認知、学習、心理上の問題がある場合、複数の専門職で連携し、医療サービス間でも情報を共有するよう勧めています。て解決する」というより、同じ記録を関係者で共有することが重要です。

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早めに医療機関へ相談したい変化

次のような変化がある場合は、次回の定期受診まで待つのではなく、主治医や医療機関へ早めに相談してください。

  • 以前使っていた言葉を使わなくなった
  • できていた着替えやトイレができなくなった
  • 会話が急に成立しにくくなった
  • 歩き方や手の使い方が変化した
  • 学習した内容を急に失ったように見える
  • 夜間の異常な動きや覚醒が増えた
  • ぼんやりする回数が急に増えた
  • 薬の変更後に生活へ大きな支障が出た

一度獲得した能力を失う「発達退行」は、単なる個人差として扱わず、発作、睡眠中の脳波異常、薬、基礎疾患などを含めて評価する必要があります。

一部の発達性てんかん性脳症では、発作やてんかん性脳波が活発な時期に、発達の停滞や退行が見られることがあります。ただし、退行があるからといって、家庭で特定のてんかん症候群を判断することはできません。作

日本てんかん協会は、次の状態では救急車で医療機関を受診するよう案内しています。

  • 1回のけいれん発作が5分以上続く
  • 短い間隔で発作を繰り返す
  • 発作と発作の間に意識が回復しない

実際の対応は、主治医から渡されている発作時対応表や緊急薬の指示を優先してください。必要はない

子どものぼんやりした様子を見て、「また話を聞いていなかった」と叱ったあとに、発作かもしれないと不安になることがあります。

反対に、すべてを発作と考えて、本人が自分で取り組める機会を減らしてしまうこともあります。

しかし、短い場面だけから発作、不注意、眠気を完全に見分けるのは困難です。

保護者の役割は、原因を言い当てることではありません。

  • どのような場面で起きたか
  • どのくらい続いたか
  • 前後で何が変わったか
  • 学校と家庭で共通しているか
  • 薬や睡眠との時間的な関係があるか

これらを記録し、診療と支援につなげることです。

「怠けている」「努力が足りない」「薬のせいに違いない」と早く結論を出さないことが、子どもを守る第一歩になります。

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まとめ|発作の回数だけでなく生活全体を伝えよう

てんかんの子どもの「ぼーっとする」「忘れる」「勉強が遅れる」は、一つの原因だけでは説明できません。

発作、発作後の疲労、薬、睡眠、ADHD、学習上の特性が重なっている可能性があります。

特に覚えておきたいのは、次の4点です。

  • 発作が止まっていても、注意や学習の困難が残ることがある
  • 「発作か発達障害か」の二択ではなく、併存も考える
  • 薬の影響が疑われても、自己判断で中止しない
  • 家庭・学校・医療機関で具体的な記録を共有する

診察で伝える内容は、発作回数だけではありません。

学校で何に困っているのか、宿題にどのくらい時間がかかるのか、いつ眠そうなのか、以前できていたことに変化がないかも、治療や支援を考える大切な情報です。

発作のコントロールと、子どもの学びや生活を切り離さずに相談していきましょう。

Q
子どものぼんやりが欠神発作か不注意か、家庭で見分けられますか?
A

家庭で完全に見分けることは困難です。始まりと終わりが急か、何秒続いたか、声かけへの反応、身体の動き、終わったあとの様子などを記録し、主治医へ相談してください。

声かけに反応したかどうかだけで、発作か不注意かを決めることはできません。安全に配慮できる場合は、動画が診断の参考になることもあります。

てんかんと不注意に関するFAQ

Q
発作が止まっているのに勉強が苦手なのは、発達障害なのでしょうか?
A

発達障害だけが原因とは限りません。注意、記憶、言語理解、処理速度、睡眠、薬の影響、欠席による学習の遅れなど、複数の要因が考えられます。

発作が落ち着いたあとも学校生活に困難が続く場合は、小児神経科へ生活上の変化を伝え、必要に応じて発達・心理・認知機能の評価について相談しましょう。

Q
てんかんの薬を増やしてから眠そうです。薬を減らしてもよいですか?
A

自己判断で薬を減らしたり中止したりしないでください。発作が再発または増加する可能性があります。

薬を変更した日、眠気が始まった日、睡眠時間、発作の有無、家庭と学校での様子を記録し、処方した医師へ相談してください。

Q
学校には子どものどのような情報を伝えればよいですか?
A

病名だけでなく、普段見られる発作の様子、発作時の対応、緊急連絡の基準、発作後の疲労、薬による眠気、学習上の苦手さを具体的に共有します。

学校には「集中力がない」という評価ではなく、起きた時間、授業、持続時間、反応、終了後の様子など、観察できた事実を記録してもらうと受診時にも役立ちます。

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