
発達障害の人って、よく「空気が読めない」って言われるけど、なんで?

空気が読めないというよりは、表情の微細な変化を読み間違えたり、言葉になっていないシグナルを拾えてなかったりすることが多い、という感じだと思います。
日本人は「空気=非言語的なコミュニケーション要素」に頼る方法で情報伝達してくるケースが多く、発達障害であることが不利に働く場面によく遭遇します。
このページでは、発達障害と表情の関連についての情報をまとめておきます。
「空気を読む」は言語化を諦めた定型発達の甘えだと心の中で叫びつつ、発達障害のコミュニケーションでうまくいかない「表情の読み取り」あたりのことをお伝えしていきます。
発達障害の表情変化での問題点

まずは、発達障害当人の表情について。

私はADHDですが、無表情というよりは「不適切な場面で笑う」ことで空気をぶっ壊す傾向にあります。経験的に、無表情でいることがリスクが少ないから笑うことが減っただけです。
本人の特性によらず、表情変化を意図的にセーブしている場面もあるため一概に言える話ではないのですが、まずは特性から表情に与える影響についての情報をまとめていきます。
ASDは表情変化に乏しい?
自閉症児は表情の変化に乏しいことが特徴として挙げられる場合があります。これは一番大きな理由は、後述する「他者の感情変化への反応が乏しい」ことが理由だと考えています。
非言語的コミュニケーションに頼る定型発達
コミュニケーションにおいて「表情」も重要なシグナルのひとつと考えられています。
有名なメラビアンの法則では、コミュニケーションにおいては、非言語的な情報が9割を占めるとしています。「7-38-55ルール」あるいは「3Vの法則」とも呼ばれるこの法則、言い換えると一般の方たちは9割以上は相手の発言内容よりも自己解釈によって情報に意味付けをしている、とも言えるわけです。
自閉症とミラーニューロン
ちなみに、この表情の変化を学ぶ鍵と言えるものが「ミラーニューロン」です。
赤ちゃんが親の顔を見て笑うのは、楽しいからというよりは「真似」をしているだけとも言えるのですが、この「真似」に関する役割を担うのがミラーニューロンであると考えられています。
このミラーニューロン、定型発達群に比べて自閉症スペクトラム症候群では活動が低い可能性があることが指摘されています。
自閉症スペクトラム障害群では、下前頭回などの活動が低いことが示されました。下前頭回は、他者の運動と自分の運動を結び付ける「ミラーニューロン」があるといわれている部位です。さらに、神経ネットワークの分析の結果、定型発達群では上側頭溝(表情の視覚分析に関わることが分かっています)と下前頭回が機能的に結合する神経回路が形成されているのに対し、自閉症スペクトラム障害群ではこの回路がうまくはたらいていないことが示されました。
この研究結果から、ASD児は表情を使ったコミュニケーションの発達が遅れる=コミュニケーションが苦手だと考えられています。
表情不足は練習不足
笑顔の真似をしていくことで、自分が笑顔になると相手も笑顔になるという反応を楽しんで本当の笑顔になっていくのが表情によるコミュニケーションの始まりですが、この最初の段階で、笑顔の練習がうまくいっていないのが自閉症患児の表情の特徴だと言えます。
笑顔の練習不足による表情形成の歪さが生じている問題と、相手の表情変化に応答して自身の表情を変えるという非言語的なアプローチのコミュニケーションが苦手という問題がありそうです。
特に幼少期においては、言語的なコミュニケーションが未熟、体得できていないので、双方の意思伝達を表情や声のトーンでやりとりするしかない状況下で、大事なシグナルをうまく認知できない状態であると考えられます。

外部刺激への興味が薄くなり、自己世界に閉じこもる傾向があるから、自閉症な訳ですね。
普通のアプローチだと、子供の興味の対象に入り込むことができないので、自閉症傾向がある場合には相手の関心のある世界に飛び込むことが必要になるのですが、この辺りはまた別の機会に解説します。
過集中と表情変化
ASDの場合は、興味・関心の対象が限定的という特徴があります。言い換えると、ASDの方にとって楽しいことと楽しくないことがはっきりしている場合があります。
先に言っておけば、コミュニケーションを楽しむASDの方もいます。このコミュニケーションの楽しみ方も定型発達の考えているコミュニケーションの楽しみ方とはニュアンスが異なる場合があるので、本人が「コミュニケーションが好き」というと「ん?」となるケースもありますが、これはまた別の機会に話します。
興味が持てない故の無表情
この興味の対象がはっきりしていることで、ASDの方の場合は、「退屈」がはっきりと表情に出る場合があります。周囲が盛り上がっている中で、一人だけ退屈そうに無表情でいたりすれば「表情の変化に乏しい」と感じられる場合もありますが、これはシンプルに退屈なだけです。会話に興味が持てないのです。
逆に言えば、定型発達であれば言語的コミュニケーションなんて1割くらいしか意味を成していないので、「盛り上がっている雰囲気」だけで共感的に楽しむことができるとも言えます。相手が何を言っているかは問題ではなくて、相手が楽しんでいれば自分も楽しい、というハイセンスなコミュニケーションの楽しみ方ができるわけです。
この場合、ASDは表情の変化に乏しいとは一概には言えず、楽しい時には率先して会話に参加して笑ったりしていると思います。
ADHDは空気が読めない?
ADHDの場合は、ASDとは異なる特徴を持っています。
ASDを併発した特性を持っている方もいるので、分けて考えすぎてもいけないような気もするのですが、ADHDらしい表情についても少し考えてみます。
ADHDの特性と表情
ADHDの方の中にも「周囲と馴染めず、空気が読めていない」ことで悩まれている方がいます。これは、先述のようにASDを併発して非言語的なコミュニケーションシグナルを見落としている可能性はあります。
しかし、ASDとは少し異なる様相の「興味関心の偏り」がADHDにもあると考えられます。
ADHDの場合は、「不注意」と「多動・衝動性」という大きな二つの特徴があります。どちらかの特徴が強い場合と、どちらも併発している場合があります。
「不注意」に関しては「集中力」に関する要素が大きく、「多動・衝動性」に関しては「優先順位の決定」に関与する部分が多いと感じていますが、これらの行動決定要因にワーキングメモリという作業領域に影響する記憶力が関与していると考えられているので、どちらも併発しやすい特性だと思います。
では、これらの特徴が表情にどういう影響を与えるのかといえば、「相手の話を集中して聞けていない」ことによる「表情の作り間違い」のようなコミュニケーションエラーが存在すると思います。
意味を取り違える表情のミスコミュニケーション
例えば、相手が「自分が失敗した話で、悲しい中でも自分いじり的に笑ってみせる」というシチュエーションがあります。相手が求めているのは、「同情」で一緒に悲しんでもらいたい場合でも、ADHDの場合は話の真意が見えないうちに「楽しい話だ」と勘違いして相手を笑ってしまう場合があります。
話の内容を勘違いして不適切な表情を浮かべる
私はよくこのミスをします。私の場合、APD(聞こえているけどうまく聞き取れない)のような症状がある時もあって、相手の話の断片だけで相手の会話内容は脳内で補正する傾向があります。これで「笑う場面じゃないけど、相手が笑ったから笑顔を見せたらそういうことじゃなかった」というケースは頻発します。先輩相手だと緊張するので、余計にこれをやりがち。
こういった失敗を繰り返すと、相手との会話の時に「どういう表情をしていいか分からず、とりあえず畏まった顔をしておく」というライフハックを発明します。真面目に聞いておけば、相手が怒ることはありませんからね。「そんな真面目に聞かなくてもいいのよー」と、相手から指摘される場合はありますが、うっかり笑った時のリスクよりはずっと穏やかに職場でやり過ごせるので。
相手の話をじっくりと聞くことができずに、脳内で相手の話を補完すると発生しやすいケースなので、ADHDには多くみられると思います。定型発達でもあるとは思いますが、頻度は圧倒的にADHDが多いと思います。相手の話が待てない、のは多動・衝動性による障害ですね。
相手の話に集中できず、表情を作り忘れる
あとは、ASDと同じように、興味がない話だと、ADHDも話を聞かずに妄想し始めたりします。これは注意散漫による「会話に集中できていない」ことによる弊害だと思います。
適当な愛想笑いなどしていると「反応が悪い」と相手が感じる場面はあります。実際に、話は聞いていないので怒られても仕方がないと言えば仕方がないのですが。でも、退屈なものは退屈ですしね。
発達障害者が読み取る表情変化

ここからは発達障害者の目になって、「表情をどう読み取っているか」について説明していきます。
ASDには表情がこう見える
ASDの方は、表情の変化を読み取ることが苦手という話は既にしました。生まれた時から、表情を学び取るミラーニューロンの働きが弱いことで、笑顔の真似をしないというケースがあるということです。

自閉症育児において、親にとってもつらいあたりですよね。笑顔の子供が見れない、反応がないのは思っている以上につらいことだと思います。
ミラーニューロンに関しては諸説ありそうですし、ASDのコミュニケーションの問題点においてはあくまでも一要因に過ぎない仮説だと思います。
ただ、コミュニケーションが問題なることが多いASDだからこそ、表情の読み取り方法を学び、ある程度はトレーニングによって補足することで社会生活のスキルを高めることができれば少しくらいはいきやすくなるのかもしれません。
ASDは相手の口元を見る
統制群は目に関して,全ての表情において注視点の割合が一番高かった.左右の目を併せるとほぼ半数の平均 48.8%占めている,また自閉症群は,鼻・口の割合が一番高かったが,他の部位と照らし合わせてみてみると,目・鼻・口・顎と広範囲に注視点が分散しているのが特徴であった.今回の結果から自閉症群は統制群ほど目は見ないが,他の部位は見ているといえる.
サンプル数が多くはありませんが、一般的な人は「目」をみて表情を察するのに対して、自閉症群は「鼻と口」を注視していることがわかります。
目を見るのは日本らしいコミュニケーション?
これはちょっと文化的な背景もある可能性があるのでなんとも言えませんが、日本の漫画は目を大きくするデフォルメがされます。少なくとも日本においては目は口ほどに物を言う、というのは本当のことのようです。
言語的に理解を求めようとする場合は、ブレスや口輪筋の動きが音声を聞き取る場合に重要になってきます。英語圏では、言語的にも英語の発音で舌を突き出すものもあるので、言語理解を進める場合は口元を見る機会が多いと思います。

欧米圏で「マスクの着用」が嫌がられるのは、相手の表情が見えづらくなることもありますが、こう言った言語的なコミュニケーションの上でも支障をきたしやすいという事情があったのかもしれません。
日本の場合は、根本的に「言わない美学」みたいなところが重視されて、相手に察してもらうのがコミュニケーションの主体となるから、相手の目の動きを見て察するように訓練されている、とも言えるよね。ASDにとってはわかりづらいコミュニケーション文化なのかもしれない。
いずれにせよ、自閉症児においては、顔の全体を見るというよりは、口元を中心とした一部位だけに着目してコミュニケーションを取る傾向があるようです。
ASD以外の表情の読み取り
対象児の半数以上は、LD や発達性協調運動障害を含めて複数の症状を併せ持っており、全員に共通するのが、友人関係の希薄さやトラブル等の社会性の問題である。PDD(ASD)、ADHD、LD(Dyslexia)の3障害の関連については、その共通性や鑑別をめぐって論議があるが(平谷,2005)、社会的認知は様々な心的要素を統合した複雑な機能と考えられ、今後、ASD だけでなく、他の発達障害児における社会的認知との関連性を検討する必要があろう。
ASDの場合は、明確に「コミュニケーションの障害」がDSM-5(精神疾患の鑑別の基準のようなもの)に明記されているため、研究も進んでいるのですが、他の発達障害であるADHDやLDに関しては表情に関する研究はそれほど進んでいないようです。
発達障害者の表情読み取りの困難さ
発達障害者については、直近3ヶ月間において「怒り」「嫌悪」「恐怖」を多く経験しているほど、曖昧な感情表現に対して不快な感情を読みとりやすいことが示唆されたが、定型発達者においてはそのような関連性は認められなかった。
発達障害者のコミュニケーション・スキルの特性評価に関する研究-F&T感情識別検査拡大版の開発と試行に基づく検討-
ざっくりといえば、発達障害者は「音声のみ」で情報を受け取ろうとする傾向が強いことが伺える結果になっています。
引用後半の「発達障害者は、不快な体験をしているほど不快な感情に読み違えやすい」という結果は、発達障害の特性というよりは、経験による負のフィードバックが発生しているような気がしなくもないですが、傾向としては把握しておきたい事象です。
発達障害者が知っておきたい、表情の読み取り傾向
- 発達障害があると「表情を読み間違い」やすい傾向はある
- 音声による感情の読み取りを行う傾向はある
- 負の感情は「怒り・嫌悪」に引っ張られがち
発達障害の表情トレーニング

最後に、「発達障害者が表情に関して苦労をしているということは分かったけど、具体的にどうしたらいいの?」というあたりのことをまとめて終わりにしたいと思います。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)
一番最初に考えられるのは、SST(ソーシャルスキルトレーニング)です。SSTの詳細な説明はここでは省略しますが、「生活技能訓練」として、認知行動療法の一環として取り組まれている社会生活における練習方法です。
表情のトレーニングとして具体的に取り入れる場合には、事例を用意して「この時の〇〇さんの気持ちは」という議題で表情に関する考察を深めていきます。理解が深まったところで、対応はどうするべきだったかを話し合い、ロールプレイしてみる、というグループワークが考えられます。

グループワーク自体が、言語化する作業になるので、相手が普段言わない感情について知る機会となるし、発達障害者にとっても有益なトレーニングになると思います。
もう少し簡易なものであれば、イラストや絵本から、表情をみて、イラストの気持ちを言語化してみる、という作業も考えられます。
まずは正直に思ったことを聞いてみて、「相手に声をかけるならどんな風にする?」といった感じで具体例に落とし込んでいけば、家庭でも取り入れやすいSSTとなってくると思います。
自分の気持ちを伝える(自己開示)
相手の気持ちを想像するトレーニングと合わせて、自分の気持ちを伝えるトレーニングも大事だと思います。
発達障害があると、自分の興味・関心のある事柄に閉じこもりがちで、周囲からするとどんな風に声をかけていいのか戸惑う場合があります。
まずは会話のきっかけを増やすためにも、「自分のこと」をしっかりと説明できる訓練をすることも大事です。自己紹介を完璧にしておくだけで、初対面などの緊張する場面でも相手との会話に困ることが少なくなります。
自己開示する内容はテンプレ化できる
自己開示に関しては、相手に合わせた反応をする必要はないので、事前の訓練が役立ちます。ただ、自己開示する部分や量に関しては、事前にある程度決めておいたほうが実際の場面で役立てやすくなります。
表情においては、テンプレがあった方が自分主体で話を続けていけるのでハードルは少し下がります。
テンプレ化した質問を広げる
相手に好きな話をさせると、どうしても興味が減退してしまうので、うまく自分の好きな話に誘導することも有効です。空気は読めていないかもしれませんが、相手が何かしら話をしてくる場合は相手もそれなりにコミュニケーションを欲している場面だと考えられるので、うまく会話を広げることで相手の安心感につながる場合もあります。
話に詰まると、大体話の振り方は固定化されています。固定化されている質問に対しては、自分なりに話題を広げることで主体的に会話を進めることができます。
- 仕事の調子はどう?
- 昨日、何してた?
- 最近、〇〇(共通の知人、家族、ペットなど)は元気?
- 天気の話

これらの「固定化された質問」に関しては、相手も本当に情報を知りたいわけではなくて、「会話をしたいけど、あなたは何か話題ありますか?」という意味合いに近い声かけです。

馬鹿正直に、言いたくない昨日の話をしなくても、「昨日ではないけど、この間〇〇のライブを見に行って楽しかった」という話でもいいわけですね。会話を成立させることが目的ですから。
表情を動かす運動
これは私の専門ではありませんが、意図的に笑顔を作ったりする練習をしておくことは表情で相手に何かを伝えたいときに役立ちます。
多少のぎこちなさはあっても、相手に「嬉しい」などの感情を伝えるときに笑顔を浮かべるだけでも、言語的に伝えるよりも感情は伝わります。
コメント
「以外 言葉 言葉 以外」に関する最新情報です。
この記事は、医師がパソコンに集中しすぎて患者とのコミュニケーションがおろそかになっている問題を取り上げています。パソコンを使うことは必要ですが、患者の言葉以外にも大切なことがあると指摘しています。記事では、患者一人一人の顔や感情を読み解くことや、患者の不安や喜怒哀楽に寄り添うことが重要であると述べています。医師はパソコンの入力に集中するだけでなく、患者とのコミュニケーションにも時間を割くべきだと呼びかけています。
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https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_64814773e4b0756ff85b6e31