わたしは看護師を数年前に辞めて、今はライターとしてのほほんと暮らしています。
完全に自分の興味ですが、もともとSF好きということもあって、AIについて日々調べています。
そんなわたしが、「看護師」がAIを活かすとどんな未来が待っているのか、少しずつ書いていこうと思います。本日は、わかりやすい「記録」についてです。
看護記録の大きな問題点
看護記録、書いてますか。看護記録については語り始めると止まらなくなるのですが、看護記録の根本的な問題を把握することで、AIがどこを代替すべきなのかが見えてきます。
残業の原因
まず、キャッチーな話題から。
看護師のみなさん、どうしてこんなに残業が多いんですか?
それはね、勤務時間内が忙しければ忙しいほど、記録を書く時間がないから。そして、忙しいほど、記録の量が増えるからだよ。
忙しいだけでも大変な看護師が、忙しい分だけ記録業務も増えるという、悪循環にあることは、周知の事実。だけど、看護記録を書かないと何か起きたときに「なぜ書いていないのか」と問われると面倒。
実際、法律で「看護記録」は保存の義務はあるけど「書く義務」はないから、なくせばいいのにとは思うんだけどね。
中途半端な記録はかえって不利になる
まず、記録は書かないことで「やっていない」と判断されます。ルーティンな業務ほど記録は端折ってしまいたいのですが、吸引を1時間おきにしていたら、回数ではなく時間の記録が必要になります。
これ、やってみるとかなりの記録時間が取られるんだよね。。。
特に夜勤中、携帯端末を持っていても病室で使用できないと、巡回が終わってから記録しよう→忘れる、勤務最後の記録が尋常な量でなくなる、というのはまじで魔のループ。
逆に言えば、看護としてやったことを裁判資料として耐えられる記録として証明できれば、看護記録は簡略化してOKということにもなります。医療者間で必要な情報共有は記録とは別の媒体で済ませればいいわけで。
解決策は「自動化」と「正当性」
そもそも、書き換えられる記録は、客観性の乏しい資料です。今後の看護記録は、いかに「自動」で記録され、かつ資料としての「正当性」を保てるかがポイントになります。
下手に看護師の主観を書くよりも、記録に関しては手を加えることなく正確な情報を残しておくのがポイントになりそう!
例えば音声録音や病室録画などで自動でデータを取り続けると、「必要なデータ」を取り出すのが大変になるけど、そこでAIが登場します。
AIは情報の分析や検索が得意です。学習されたAIであれば、自分でデータにラベル付することもできるので、音声であれ画像であれ動画であれ、「○日の吸引の画像を出して」と聞けば該当するデータを拾ってきてくれます。
記録者の質も下がり続ける
記録者の質が落ちる、と書くと確実に反発が起きるので書きたくないのですが。
また、私たちゆとり世代を目の敵にして!
してません。ゆとり世代も、それよりも年寄りの私や、もっと若い世代も、総じて記録をする力が低いです。
わたしはそれなりに大きい病院で働き、それなりに専門的な教育を受けて看護師となった方達を指導したりもしてきました。ですが、記録に関しては頭を抱えざるを得ない状況でした。
読解力の低下
まず、文章が作れない以前に、文章が読めない学生・新人が多いこと。
「教科書が読めない子供VS AI」に、子供たちの読解力が落ちていることが書かれていますので、わたしからの説明は省きます。
「読めないから、書けない」は多いにあり得る話。語彙や論理構造以前に「事実を伝える」ことも難しい記録が量産されております。
これは、そもそも事実を伝えるための文章が読み取れておらず、「単語」をつなげて記録のようなものを作って満足している若い医療者は多いのです。
この話を聞くと「ムキーっ」となったり、「そんなはずはない」と受け入れられない方もいらっしゃるかもしれません。ただ、しっかりと読みこなし、書いて伝えるってのは、それなりに高度なスキルが必要なわけで。
看護師は、まだマシな方だと思いますけどね。業種によっては混沌としてそう。
記録は「書けない」から残業が増える?
先ほどの問題にもリンクしますが、対して意味もない情報を書くのに余計な時間をかけてしまう「心配性」な新人もいます。
いつまでも残ってるからどうしたのかと聞いたら「入院患者さんの情報をまとめられない」と嘆いていた子がいたね。
情報をまとめることは、頭の中で患者さんの特徴や、看護上の問題点を自然と展開していく必要があります。うまくまとめられないのは、色々な課題があるにせよ、「書けないと時間がかかる」のは経験があると思います。
情報なんてその都度必要なことを聞き取ったり、自分で拾い集めるものだから、担当看護師一人が頑張ることはないと思うんだけどね。
いずれにせよ、必要な情報を即座にピックアップしてくれて、かつ常に見聞きした情報をまとめておいてくれるAIがそばにいれば、記録に時間をかける必要がないことは明白です。
記録媒体の変化
また、記録の方法についていけない、という方は今後も増えていくと思います。
これから、さらに記録方法は変化していきます。どちらかと言えば、「煩わしさ」から解消される流れになると思います。
ですが、「変化」に弱いのは人間のつねで、特に歳をとると旧来のやり方を押し付けて部署の発展を滞らせる方もいます。
PCからスマホへ
やっとパソコン入力になれたのに、また変わるの?
これからは、情報の入力は携帯端末に変わります。PDAを持ち歩いていた方は「あれ、入力しづらいんだよね」となりそうですが、やることはスマホでLINE打つのと一緒なので、かえってわかりやすくなるかもしれません。
少し触れましたが、音声入力も精度が上がり、キーボードを使用することなく、ボイスメモ感覚で記録が書けるようになりますよ!
電子カルテがアプリ化
また、温度版や看護ケアの記録についても、ソフトウェア側でどんどん改良されて、使いやすくなっていきます。
まだ、看護師業務とリンクしてくれるエンジニアが少ないけど、多種多様な働き方が増えれば、看護師エンジニアだって出てくるはず(なりたい)。
業者に希望を伝えてもいまいち使い勝手の悪かったものも、育児記録アプリのように、入力したい項目をタップするだけになります。
心電図モニターなどの身体管理に使用される医療モニター関連も全て紐付けられるので、「心電図は異常なし」などの記録も不要になります。
今でも可能な技術ばかりなので、あとはやるかどうかなんだけど、病院も経営が苦しいから機材の一斉交換などはなかなかできないのが現状です。。。
キーボードから音声入力へ
先ほども少し触れましたが、入力自体も簡略化されていきます。
これは導入する病院次第ですが、患者さんとのやりとりやボイスメモで音声データを残しておけば、自動でテキスト化されてカルテに入力できるようになります。
音声入力の精度が格段に上がっているのは、Google検索などで活用されている方も多いと思うのでご承知の方も多いかと。
音声入力がすごい
今、音声データがGoogleやAppleといった企業がかき集めており、音声入力分野は加速度的に進化しています。技術を使えば、キーボードでの記録入力はもうなくなることになるでしょう。
そもそも、客観的なデータを残すなら、あいだに看護師を通すことなく、データだけ残しておけばいい話。次に続きますが、そこから看護師が情報をどのように「評価する」のか、どのデータを医師や他の医療スタッフに伝えたいのか、を選別するのが看護師の大事な役割となるでしょう。
AI記録の中での看護師の役割
では、AIが病院に導入されることで、看護師の役割はどのように変化していくのでしょうか。
今も、看護師としての役割を真っ当出来ている自信はないけども、意識的に取り組まないと「AI以下」の人材として扱われちゃうかも。。。
情報を引き出す、意味づけする
まず、情報の取り方も専門性が発揮されるべきです。
仮に、看護師と患者の会話記録が残されるようになると、「何を聞くのか」がとても重要です。聞く内容も、聞く順番も、聞く看護師によっても、患者の返答が変わってきます。その中で、データとして意味づけるものはなんなのか、患者の真意はどこにあるのか、考えながら患者の訴えを聞き取っていく必要があります。
患者は自分のことを説明できない
また、患者さん自身も表現できないことを、丁寧に聞き取っていくことで意味づけできる場合もあります。
「なんとなく治療が心配。。。」という患者さんと話をして、心配させている原因は何なのかを患者さんに気づかせることで、治療への満足度が変わる可能性もあります。
言語化できない部分を、看護師が補助できるといいね
情報を強調し、共有する
データが膨大になると、読み取る方が大変になってきます。
データ解析に関してはAIがやってくれるので、診断や治療のために必要な情報は、AIに聞けば膨大なデータから、関連づけられたものを分析つきで情報提供してくれることでしょう。
しかし、医師が気づかない患者の訴えや、医療職で共有したい情報に符号を付けるのは、聞き取った看護師の役目となりそうです。
一番そばにいる看護師だからことできることを、考えていく必要があるね。
AI時代の看護記録のあり方
では、実際に看護記録はどのように変わっていくのか、これからの時代に必要な記録術について説明していきます。
SOAPについて
私は記録で「SOAP」を多用していましたが、説明するのも単純でいいのでソープ使わせてください。
S情報は音声データでいい
先ほどから少しずつ書いてますが、音声入力ができその場で客観的なデータが撮れるのに、あえて看護師が記録をする必要はないはずです。
SOAPでいう、患者さんの訴えである「Sデータ」は、データを抜粋するのはいいとして患者さんのニュアンスを伝える上で「音声データ」を添付するだけでいいと思います。
Oデータだって連動したらいい
Oデータに関しても、先ほどのS情報を話している患者さんの様子はカメラでモニタリングすればいい話です。表情の変化や、声のトーンなどは、見る人によって解釈が変わります。解釈はアセスメントの部分。
心電図モニターや、点滴のアラームだって記録にリンクさせちゃえばいいよ。医療過誤で裁判の資料にされるなら、自分たちの正しさを証明するためのデータとして活用したらいい。
なんでも記録されちゃうと、ズルできなくて、すっごく、働きづらそうだけどね。。。
アセスメントすらAIが行う
アセスメントの軸となるようなことも、AIから提案されるようになると思います。
AIは自律思考ではないので、クリエイティブな着想は得られないにせよ、過去の膨大なデータと、現在の患者の状態を照らし合わせて「似たような状況下でされやすいアセスメント」を提案することはできます。
看護師は、AIから提案されたいくつかのアセスメントから選んだり、重要度をつけたりするくらいになるかもね。
「ベテラン」のアセスメントが新人もできる
アセスメントは経験年数によって「引き出しの量」が違うから、患者からすると担当した看護師次第で、受けられるケアの質が変わります。AIを補助的に使うことで、新人看護師でも、ベテランの引き出しを使うことができるようになる、これがこれからの看護になります。
看護記録の「個別性」とは
何から何まで機械がやってくれたら、患者さんごとに個別の看護が提供されなくなるんじゃないの?
個別性ってなんなのよ、ってなりそうですね。看護師としての提供できるケアの個別性もあれば、患者ごとに求めるものが異なる個別性もあります。
個別性は余裕が生まれてからこそ光る
むしろ、個別性が失われていたのは、これまでの病名や必要度で「テンプレート」の看護評価、果ては実際のケアに関わる看護計画に使用していた、「クソ忙しい」今の時代だからこそ問題視される事柄です。
データを正しく評価することが、患者を理解することにつながり、必要なケアを提案できるようになるとわたしは考えています。
技術は取り入れてこそ
「AI」にやらせると人間味が失われて、嫌悪感があるかもしれませんが、我々専門職の人間は、必要な技術を取り入れて最善のケアを提供する努力をしていく必要があると思います。
堅苦しいこと書いたようですが、少なくとも、記録はラクになる上に、正しいケアをしていれば、データがあなたを守ってくれます。
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