ADHDで、精神科看護師をしていました。毎日「職場の鍵」を無くさないか心配でしたし、毎日家に帰ると家の鍵はないし、財布を持たずに買い物に行くし、置き忘れ・忘れ物・紛失物の悩みは尽きません。
ADHDはどれだけ注意しても忘れ物は無くなりません。だって、注意力の障害ですから、注意のしようがないのです。
ただ、できないから全てが許されるわけではないですし、自分たちでできることは「無くすことを前提に、すぐに見つけられるように準備する」ことです。
今回は、AirTagという「紛失物を科学の力で見つけてくれる」アイテムがAppleさんからリリースされましたので、その情報共有になります。
AirTagとは何だ?
AirTagの説明はこちらの記事でどうぞ。別サイトですが、私が書いています。
ざっくり言えば、AirTagはAppleがリリースした「スマートタグ」です。
スマートタグってなんだ?
スマートタグとは、「忘れ物防止タグ」「紛失防止タグ」などの呼ばれ方もされます。何をするかと言えば、居場所をスマホに教えてくれたり、スマホから離れると自動で通知が出たり、あるいはスマホから操作してタグを光らせたり音を出させたりすることができます。
もっと簡単に言えばスマホと連動して「ものをなくす」ことを防げるアイテムということですね。
ADHDにAirTagが必要な理由
ADHDの人が検索してたどり着いていることを想定しているのですが、念のために、ADHDはなぜ忘れ物・紛失物が多いのかを解説します。
ADHDがものをなくす理由についてはこちらに詳細な記事を書きました。
ざっくりとADHDがものを無くす理由を書けば、ADHDは生活動作などを脳内で処理する力が弱く、使用したもの、片付けたものなどの場所を記憶しておくことがとても苦手です。
ADHDに対しては「ものを無くさないように努力する」ことがそもそもできないので、やることとすれば「なくなったものを簡単に見つける」ことを目指すべきです。
私の感覚だと、散らかった部屋でも生活できるのは、生活動作とものの位置記憶が連動できている人。
— ぶっさん@看護師ライター (@nurse_life_3) April 16, 2021
ADHDは位置記憶は保持されず、気づいたら部屋が散らかる。散らかっている部屋だと居るだけで脳処理が占領されて生活行動に支障が起きる。だけど、片付けは見えなくするだけで無くす作業と同意で徒労 https://t.co/rkQgxAoLZo
この、「無くしたものを見つける」ことを簡単にやってくれるのがAirTagであり、類似品であるスマートタグということになります。
スマートタグの中でもAirTagがおすすめな理由
あまり長い文章を読みたくないと思うので簡単に説明します。
- スマートタグは「利用者数」が多いほど紛失物を見つけやすい
- スマホシェアが世界・日本でも最大であるiPhoneが最適
- AirTagはiPhoneがあればかなり正確な位置情報まで読み取ることができる
- スマホ自体が「忘れ物防止」のための必需品なので機能が連動すると「確認すべき場所」がスマホ一箇所にまとめられる
ただ、ひとつだけ難点を挙げるとすれば「スマホを無くすと何にもできない」ということ。ただ、AirTagなどの場所は、パソコンなどがあればiCloud.comなどで簡単に探し出すことができるのはいいですね。
スマートタグについては別サイトですが、たくさん種類のあるスマートタグの中から、自分にとって最適なものをどうやって選ぶべきか書いてみたモノがあるのでそちらをご覧ください。
ADHDはどうやってAirTagを利用すべきか
ADHDのAirTag利用実践編です。具体的に、どのようなシチュエーションで使うべきかを考えていきます。
何に取り付けるべきか
まずは、AirTagを取り付けるものを考えていきます。
スマホには取り付けない
当たり前っちゃ当たり前ですが、スマホでAirTagを探すので、AirTagとスマホを同じ場所に設置しても意味ありません。スマホを無くしそうな場合はiPhone標準機能の「探す」を活用することをお勧めします。
カバンに取り付けるかどうか
まず、第一候補が「カバン」です。ADHDの方が読んでいるとは思いますが、ADHDじゃないかたに説明する場合、我々は「カバン」すらなくすということを伝えなければいけません。
なくすというか、「持ったつもりで家を出る」ことが日常茶飯事ということですね。
防犯対策としても役立つ
カバンに取り付けておくと「防犯対策」として、カバンがスマホから離れた時に通知やアラート音を出すことができます。置引きやスリなど、そのときに気づければ対策のとりようがある窃盗に関しては効果を発揮することが期待されます。
忘れ物時にアラートで教えてくれる
忘れ物防止という意味では、玄関まで持っていって安心して、手に持たずに家を出た時なんかにスマホを鳴らすことなんかができます。
また、電車内で我々がカバンを手放すような愚かな習慣はないつもりではありますが、「確実に手から離していないのに」それでも置き去りにしてしまうことはあります。あれ、何が起きているんだろうね。この場合、駅などの人が大勢いるところならAppleデバイスを利用している人は確実にいるので、位置を追跡することができます。
財布に取り付けるか
ただ、鞄を持っていても、肝心な中身がない、ということもよくあります。
ADHDライフハックとしては、使用するカバンを変えないということもあるのですが、何かの拍子に、何を思い違えたのか、カバンの中身を取り出してしまうことがあります。
カバンから出すということは、常に「しまう」作業が付随することを念頭におくべきなんだけど、取り出さないことには使えませんからね。
ADHDの場合、カバンから取り出したものは、基本的には「しまい直す」ことは忘れてしまいます。取り出すときには意識していても、次の作業時には記憶から消去されてしまいます。場合によっては、取り出したものも、カバンも、全てどこに行ったかわからなくなり、捜索が始まります。
カバンから取り出したら通知が出るようにする
何かの拍子にカバンから財布を取り出すことはあります。クレジットカードのセキュリティコードを確認したりする際ですね。私くらいだと、家用のクレジットカードがあるのでカバンから出したりはしないのですが。しないはずなのに、カバンから財布が出ていて、それに気づかずに買い物に出たりします。
AirTagは小さいので財布などの小物に取り付けることもできます。また、スマートタグの中には「カードタイプ」のものがあり、クレジットカードなどのサイズで財布にしまえるようになっているものもあります。
とにかく、これらの「持ち歩かないといけないもの」に関しては、スマホから距離ができたときには通知が出るように設定しておくことで、「スマホ画面を見て通知を見たら」必ずカバンに戻すことを心がけるようにします。後回しにはしない、絶対に。
※この辺りの設定に関しては、発売後にまとめ直します。多分できるはず。
AirTagで必需品は全てまとめて管理する
私としては、定期入れや財布、車の鍵などは全てAirTagを含めてキーチェーンでまとめておくことをお勧めします。
できることなら、家の鍵も車の鍵も「スマートキー」にして、取り出さずに使用できるものにしておくことが一番です。鍵の捜索なんて、家を出るときと帰るときだけで数十分くらい探している、あの無駄な時間は削減すべき。
基本的には今紹介した「日常かばん」と「財布などの小物類一式」にAirTag、スマートタグを取り付けることで、ものを探す時間を節約することができます。ものを無くしそうなときにもスマホに通知が出るので、奇跡的に気づける時もあります。
会社の鍵や備品を無くさないようにする
私は精神科看護師だったので、「病院の鍵を無くす」ことは致命的でした。だって、鍵をかけることが法律で決められていますからね。そういう施設だから。
実は、私は一度も「病院の鍵を無くしたことで」始末書を書いたことがありません。これだけは今でも誇りに思っています。ただ、病院の体温計や、自身の給与明細などは白衣に突っ込んだままクリーニングに出してしょっちゅう怒られていましたけども。
病院の鍵に関しては、どんなに面倒くさくても家に持って帰ったりしないで、「勤務が終わった儀式」として鍵を入れ替えていました。やはり、持ち出さないのが一番ですね。
やばいと思ったら忘れ物防止策を講じる
話を戻すと、会社の鍵など「無くしたらやばいな」と思ったものに関しては、預かった瞬間にAirTagなどを取り付ける習慣を作ります。まぁ、習慣を忘れるからADHDなんですけど、これは周囲の協力があってもいい。根本的に、ADHD社員に無くされたら困るものを渡す会社も悪い。AirTagは経費で買ってあげて欲しい。
とにかく、AirTagさえついていれば、無くした時の通知が出るようになります。無くした場所も最終地点が記録されます。
意図的に盗まれた場合、AirTagなどが取り外されて仕舞えば追跡不可能ですが、AirTagが取り外されるまでの経路は(AirTagがなくても)把握できます。認知度が低いときには、犯人もうっかり持ち帰るかもしれません。つまり、多少は検挙率をあげる効果はあると考えられます。
USBメモリに取り付ける
また、肝心なときに無くしがちなのが「USBメモリ」です。あれ、使いたいときにはいっつもないんだよな。
いっぱいあるから、なくなる
USBメモリに関しては、まず「複数持たない」ようにします。容量が足りなくなったらデータ丸ごと移動できる「容量の大きい」USBメモリに変えましょう。データは検索できるので、家のHDDなどに保存してもいい。とにかく、USBは複数にしない。
でも、肝心なときにないから、必要なときに買うしかないんですよね。
会社や学校、病院などで「持ち出し厳禁レベル」の個人情報をやむをえず家に持ち帰る場合も、必ずAirTagを取り付けておきましょう。
持ち出すことのない環境にしておくことが一番ですが、とにかく無くさないための対策をとっておくことが社会人としてのマナーです。
「責任感がないからなくす」などと精神論を持ち出す奴は偽物です。責任感があろうがなかろうが、なくなるものは無くなります。
結局、我々が生活するためにはいくつ必要か
AirTagの有効な取り付け位置について解説します。
- カバンにひとつ入れておく
- カバンからすぐに取り出せる位置にひとつ入れておく
- 財布・定期入れに結びつけたキーホルダーにつけておく
最低限は3つです。
特に、無くすかもしれないと認知したらすぐに予備のAirTagを取り付ける準備をしておきましょう。
いくつあっても忘れ物自体は無くならない
本当にAirTagの取り付けなものっていうのは「日常的に忘れると死活問題となるもの」です。スマホすら忘れる我々は、できる対策を全てとってなお、忘れてしまう存在であることは念頭において日頃の準備を怠らないようにしていく必要があります。
スマホを忘れない対策も考える必要がある
AirTagがいくらあっても、スマホを忘れてしまうと効果が半減してしまいます。
本当は、忘れ物があったときに振動や光で通知してくれるドローンのようなものが身の回りに浮いたり、網膜に直接情報を映し出してくれるといいのですが、まだ時代はそこまでは追い付いていません。
私は車通勤だったので、最終的にはスマホじゃないと車の鍵が開かない世の中になれば、とりあえず必要最低限の「スマホ忘れ」だけは無くすことができるのですが。今は音楽がならないとスマホがないと気づけますが、これ、すでに出発してますからね。
「何に取り付けるか」の基準を考える
ただ、生活圏の中に「無くしがちなもの」がいくつあって、その無くしたものを探すのにどれくらいの費用が割けるのか、という問題になってきそうです。
いつも探しているもの
- リモコン
- 自分で隠したはずのへそくり
- 何かのパスワード
- 明日提出する書類
- 確かにカバンに入れたはずのあれ
- 昨日まではカバンに入っていたあれ
基本的には、無くなったものはなくてもいいから無くなったものです。探すことよりも、そもそもなぜ探すことになったのかを考えて、なくても何とかならないか代替案を考えましょう。プロのADHDなら、言い訳も超一流のはずです。
ちなみに、AirTagに関しては、「なくすと困る」から事前になくなることも考えて取り付けるものです。無くすことすら思いつかないのは、それはもう仕方がありません。
定型発達の人が「当然無くさないだろう」というものでも、これはなくなると大変だからAirTagつけておきなと言語化して注意してくれる世の中だと、リマインドチャンスが増えていいのですが。
書類などに関しては「シール式」のスマートタグもあるので、本気で無くしたくない時はそういったツールを使うのも一案です。
コメント
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