実態もクソも、ADHDに気づかずに看護師になってしまった私のリーダー体験記です。
ADHD看護師のリーダー適応について
まずは、ADHDでいかに失敗を積み重ねてきたか、体験談を
ADHDでリーダーはできるのか
リーダーに関しては、先ほど「病棟リーダーに求められる素質」的な記事でご紹介しました。簡単に説明すれば、リーダーとは、組織(チーム)が効率よく動けるように取り計らう役割があります。そして、一言で言うなれば「病棟を俯瞰し、効果的な采配を行う」のがリーダーの仕事です。
実は、これがADHDと大変に相性の悪い役割で、とにかく失敗だらけで凹んだ、ということをつらつらと書いていきます。
結論から言えばできなくもない
先に、ADHDという発達障害があって、看護師はできるのか、という問題ですが。
問題はあっても看護師はできます。
これが答えかと思います。リーダーまでやらせてもらって、私の看護師人生はそれなりに幸せでしたし、またどこかのタイミングで復帰したいなとは思っていますが、とにかくADHDであってもリーダーはできます。
ADHDの症状との相性
まず、最初にADHDについて存じ上げない方もいらっしゃる方もいるかと思うので簡単に説明していきます。
ワーキングメモリの障害
まず、ADHDは基本的には「ワーキングメモリの異常」から起こる障害です。ワーキングメモリとは、情報を一時保存できる記憶の保管庫みたいなもので、人間の活動レベルに影響すると考えられています。このワーキングメモリの容量が極端に少ないのがADHDの特徴だと考えられています。
ワーキングメモリについては別記事でまとめます。
ワーキングメモリの異常から発生する事象
このワーキングメモリが悪いと、どんなことが起こるかっていうと以下のような感じ。
- 人の聞いたことを覚えていられない
- 記憶から抜け落ちると「聞いていない・やっていない」と感じる
- 自分の指示落ちが人にせいに感じられる
- 集中力が散漫になる
- ひとつのことに執着しやすくなる
- 思い至ったことをすぐに実行してしまう
- 自分の残務を確認せずに安請け合いする
今回は記憶から行動レベルへのフローは省きますが、実務レベルだとこんな被害があり、しかも被害を受けるのはメンバーだったり患者だったりするのでまじで凹みます。
こんなの、誰にでもあることじゃないの?
性格の問題などで済まされればいいのですが、普通の人は私ほどものをなくしたりしないし、短絡的で突飛な行動はしません。ただ、やはり個人差はあるし、自分が普通だと思っている人もわりとこちら側の人間だったりもするので、言及の難しいところです。
リーダーと短絡的思考
まず、ADHDの場合、短絡的な行動が目立ちます。
思い立ったが吉日みたいな感じで、頭でまとまっていないうちからもう行動しているよね
行動している本人は、ひとつの考えに占拠されているので、その行動の最中には他の業務やら周囲の動きが見えなくなっているんですよね。
私は、リーダーをやる前から「無駄な動きが多い」と注意を受けていました。実はこの無駄な動きってのは、ADHDの特徴的な行動で、行動優先順位を系統だてて実施レベルに落とし込むことができないんです。
考えられないわけではない
考えられないわけではないんです。ただ、忙しくなるほど考える余裕はないからパッと思いついたものを自分でやろうとしちゃう。結果として病棟全体の動きが混乱しちゃうんです。
そういうわけで、私は勤務開始前などの落ち着いている時間に1日の予定をみやすい形にまとめておき、こなした業務はメモから破棄する、という感じでタスクリストを処理していました。
まぁ、そのタスクリストすら頭に入らないから、仕事を落とすことはしょっちゅうなんだけどね。
リストにメモすることすら忘れるからね。
業務時間中はほぼリストの見直し
これ、簡単に書いてますけど、必然的に業務の半分はリストの確認行為になります。
リスト作るために早く来る必要があるから、私の残業時間は半端ない感じになってましたよ。ADHD発覚後は残業請求しませんでしたけど。
リーダーと無責任
ADHDは無責任に思われがちです。つまり、リーダーに必要な「責任感」が備わっていないと思われがちです。その辺りの言い訳を展開していきます。
話をしっかり聞かない
私は無責任な男と思われがちです。というのは、自分の発言も覚えていないし、人に指示したことも覚えていないからです。
しょうがないなぁ、と思ってくれる優しい先輩たちばかりの病棟だったので助かりましたが、自分だったら一緒に働きたいようなメンバーにはなってないよなと感じていました。
特に後輩から報告を受けているときは他のことを考えていて空相槌を打ち、後になって「なんで報告しなかったんだ!」とか平気で言っちゃうことがあったと思うんだよね。
安請け合いしすぎ
また、人から話しかけられると、相手の言っていることを聞き取るだけで精一杯になってしまい、結果として頼まれごとは「全て引き受けてしまう」ことが多いです。
これは、NOと言えない性格もありますが、それ以上に相手の話を聞きながら自分の業務を確認することができないし、確認しようという考えも浮かばないんです。だから相手の話を聞いているときは「できる」と思ってしまい安請け合いして、結果的に自分だけ残業してる、なんてことがたくさんありました。
患者の頼まれごとを忘れる
これは病棟の性質もありますが、患者さんから何かを依頼されることってのがかなりあります。そして、毎回それを忘れて患者さんの不信感を煽ってしまいます。
もう、頼まれる時点で「たぶん私は忘れてしまうので、遠慮なくナースコールを押してください」って説明する癖はついたよね。
時間管理ができない
私も何でこんなに時間管理ができないんだ、と悩んでいるのですが、どれだけ時間があっても遅刻してしまいます。
ルーティンレベルだと、朝早起きして職場についたりするのはできるんですけどね、業務の合間に研修あったりすると100%気づかずに遅刻しちゃいますね。
自分だけならいいんですけど、リーダーレベルになると、メンバーの時間管理もしないといけないから、マルチタスクになってどれもうまく回せなくなるってことが多かったです。
忘れ物が多い
これはあまりリーダーとは関係ありませんが、忘れ物はすごく多いです。提出物なんぞ守れた試しがありません。
必要物品が集めきれない
忘れ物に関連して、例えば導尿や点滴留置などのケアがあると、物品は揃えられません。覚えられないわけではないんです。ただ、忘れてしまうんです。
集中力の管理ができない
ADHDは基本的には集中力の障害です。注意散漫なイメージはありますが、ワーキングメモリが少ないというのは、「ひとつの物事しか見えなくなる」という症状も並行して起こります。
他の人の業務が読めない、見えない
というわけで、自分だけの仕事をしている間はあまり気にならなかったのですが、リーダーとして業務にあたると「自分はリーダー業務(雑務)に没頭してサポートがうまくできない」なんてことがありました。
何だったら自分がリーダーなのに、病棟で急変などバタバタしている時もしばらく気づかなかったこともありますしね。
意識が散漫する
また、病院という環境もなかなか過酷で、とにかく雑音やらモニターやらが多すぎて困ります。
ダブルチェックの相方になり得ない
これは、点滴などのダブルチェック作業なんかをしている時がかなり危なくて、点滴を確認しているつもりがPDAの電池残量が気になっちゃったりしてほぼ確認できてない、なんてこともありました。
何より、興味の湧かない薬剤名とかを眺めている薬剤セット作業とかがしんどくて、チェックしながら別のこと考えちゃってましたもんね。
忙しくてもぼーっとしてしまう
また、自意識に集中する=考え事をする=ボーッとしている、ということで、働きぶりの印象は悪かったと思います。
ボーッとしてはいますけど、頭の中はかなり忙しかったんですけどね。
ADHD看護師がリーダーを行うための施策
とりあえず、思いつくことを列記していきましたが、きっとADHDで看護師やられている方は悩まれていることと思います。私の思いつく限りの対策を書いていこうと思います。
周囲を活用する
まず、可能であればADHDであることをカミングアウトしちゃった方がラクです。
周囲のサポートが得られます。どういう障害なのか理解してくれる人は看護師でも少ないですが、自分の特徴を理解してもらい活用してもらうためには説明できる環境にあった方がいいです。
自分の取扱説明書
作る必要まではありませんが、自分の症状については簡単に説明できるようにしておけるといいと思います。障害がある、ということで周囲は少なくともあなたの症状には関心がある状態になるので、わかりやすく説明できる準備をしておきましょう。
例えば、以下のようなリストにしておくといいかも
- 依頼する場合はメモに残して渡してもらう(視覚情報が優位)
- メモを取る時間を配慮してもらう
- 声かけを自意識まで下ろすために時間が必要
- 大事な話は集中力が保てる環境で伝えてほしい
http://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/index.html
だいたい、こんなこと言うと、「自分ばかり特別扱いされようと思って」なんて声が聞こえるかと思いますが、あくまでも病棟であなたという人材を最大活用できる方法を提示しているので、本来は誰のデメリットにもならないことです。
誠実である
これは私の処世術ですが、「誠実である」ことはとても大事だと思います。
私は定職にもつかずにネットでライターなんかしている時点でかなりチャランポランな感じがしますが、実際、働いているときはクソ真面目です。性格は慎重なので、とにかくミスが起こらないための施策を徹底します。面倒でもやります。
ですが、ADHDなので、とにかく忘れてしまうから、結果として軽率な言動が多くなります。
献身的であれば評価は変わる
ただ、ミスの回数が多くても、「誠実」な態度を取り続けることは大切です。
幼少時代から怒られ続けて、不貞腐れて天邪鬼な態度を取ることが多かったですが、なんとか持ち堪えて看護師でいる間は「患者のために一生懸命頑張る」ことを徹底しました。
結果として、少なくとも「わざとミスしているわけではないし、ラクをしようと手を抜いているわけでもない」という評価を得ることはできたのは良かったと思います。
スマホを活用する
なぜか無くさないスマホ
ADHDはものをなくすことで有名ですが、絶対に無くさないものに「スマホ」があります。多分、私がスマホ好きなだけですが、ADHDにはわりと多い。多分、意識化からなくなりにくい(肌身離さず持ってる)からだと思います。
メモは習慣化しない
忘れないように「メモ」をとったらいいよ、とはアドバイスでよく耳にしますが、ADHDの場合、「メモ」を取ることを忘れるし、メモを確認するのも忘れるし、挙句「メモ」を失くすので結果としてメモは取らなくなります。スマホならパッと出してSiriなんかに忘れたくないことをリマインダー登録しておけば、使うときに表示されるので思い出す機会は増えます。
病院によってはスマホ持ち込み禁止
当たり前っちゃ当たり前ですが、個人のスマホを職場に持ち込んじゃいけないところもあります。個人情報の問題もありますし。
看護師に一台、音声アシスタントに対応して、リマインダーやメモの機能が解放されて、そのまま看護記録に反映できるスマホを配っておくれ。
ADHDの特性を活かす
リーダーとしての適性は壊滅していますが、ただ、あなた(私)だからこそできる看護があると思います。苦手なことでもやらなきゃいけないが今の職場環境かと思いますが、「得意を活かす」にシフトできるといいなと思っています。
- 患者の発達障害に対する理解が深い
- いろいろなものを見落とすが、同時に他の人が見つけない発見がある
- 行動化までの判断が異様に早く決断力があるとも考えられる
- 引き受けた業務を再分配すれば後に響かない
コメント
「謝罪 映像 ラッパー」に関する最新情報です。
アメリカのラッパーで実業家のショーン・コムズ氏が、元恋人である歌手・俳優のキャシー・ヴェンチュラ氏に暴力をふるった映像が公開され、その後謝罪動画を公開した。コムズ氏は自らの行為に責任を感じ、セラピーとリハビリ施設に通い始めたと述べているが、ヴェンチュラ氏は10年以上にわたる身体的、性的、精神的虐待を受けたと主張している。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_664a96b1e4b00e1a0a6c873f
はじめまして。自分も先日ADHDの診断を受けました。診断を受ける前から恐らくそうだろうと思ってはいたものの、実際に診断が下るとやはり不安でした。ぶっさんの体験記を読ませていただき、少し気も晴れました。ありがとうございます。
ぅどんくん、初めまして。コメントありがとうございます。
私も、いまだに自分がやっていることが正しいことなのか、不安に襲われる日があります。コメントの感想をいただけるだけで、方向性が決められるのでありがたいです。診断が降りても、(内服である程度の変化はあるとはいえ)基本的にできること、できないことは変わらないというのが私の感想です。ただ、自分を責めると「自分はダメだ」という気持ちで頭の中をいっぱいにしちゃうのがADHDの傾向かな、と思うので、少しでもリラックスできる時間があればいいのかな、と思います。そのために、当サイトが役立てば、心の底から嬉しいです。
読んでいただき、ありがとうございました!